2.28. URLオフロードの設定

特定の宛先(URL/IPアドレス)向けのトラフィックのみを通常と異なる経路に転送できます。

データセンタを経由してインターネットを利用する環境において、クラウドサービス通信のみを直接インターネット経由でアクセスさせることによって、データセンタへのトラフィックの集中を軽減することができます。

また、NetMeister連携時にUDPなどのHTTPS以外のすべてのプロトコルでオフロードすることができます。ただし、NetMeisterのURLオフロード画面上のチェックボックスで選択された宛先・追加URL欄にIPアドレスで宛先を記載された場合にかぎります。追加URL欄にURL等で記載した場合は対象となりません。

プロキシサーバーがある構成でURLオフロードを使用する場合、PCなどの端末側に「プロキシ例外」の設定が必要になります。この際、端末側での「プロキシの例外」設定の自動化を行うことができます。

2.28.1. URLオフロード機能概要

特定の宛先(URL/IPアドレス)向けのトラフィックに対して、通常と異なるルーティングを行います。以降、この動作を「オフロード」と呼びます。

オフロード対象となる宛先(URL/IPアドレス)は、外部定義ファイルから読み込み、装置内にデータベースを作成します。定期的に定義ファイルを読み込むことで、定義ファイルの更新にも対応できます。

URLリストを使用することでオフロード対象となる宛先を任意で設定することができます。また、定義ファイルでオフロード対象となっている宛先をオフロード対象外にすることができます。

HTTPS通信だけでなくHTTP通信(TCP/80)もオフロードすることができます。

外部定義ファイルをNetMeisterと連携することで受信することができます。NetMeisterと連携中であれば、UDPなどを含むすべてのプロトコルをオフロード対象にすることができます。

../_images/31-4_url-offload1.svg

図 2.28.1 URLオフロードの動作

パケットの宛先(URL/IPアドレス)を、データベース上の情報と比較して、データベースと一致したパケットをオフロードします。

なお、インターネットアクセスにプロキシサーバーを使用している場合、パケットの宛先IPアドレスはすべてプロキシサーバーのアドレスとなり、オフロード対象かどうかを判定することができません。このため、プロキシサーバーを使用している場合は、端末側で「プロキシの例外」を設定する必要があります。

プロキシの自動構成スクリプト配信に対応しています。端末側での「プロキシの例外」設定が自動化できます。

UTMサーバーおよびNetMeisterサーバー宛の通信はオフロード対象になりません。

NetMeister子機からのNetMeisterサーバー宛の通信はオフロード対象になりません。

2.28.2. 制限事項

  • IPv6通信はオフロードされません。

  • HTTPS/HTTP通信は、プロキシサーバーを使用していない構成時の設定の場合、最初の通信は通常の経路での通信となり、以降のセッションからオフロードされます。

  • オフロード対象は、IPv4のHTTPS通信、HTTP通信を対象にすることができます。HTTPS/HTTP以外(FTPなど)の通信はオフロードされません。ただし、NetMeister連携時にかぎりHTTPS/HTTP以外の通信もオフロード対象にすることができます。

  • 定義ファイルの形式は、XMLベースのURLリストに対応しています。

  • IPv6アドレスは未対応です。

  • URLには以下の制限があります。

    • 末尾のワイルドカードには未対応です。

  • インターネットアクセスにプロキシサーバーを使用している場合、端末側で「プロキシの例外」を設定する必要があります。「プロキシの例外」設定は自動化できます。

  • URLリストの評価順は、IPアドレスの評価の後、ドメインおよびanyを評価します。

  • 定義ファイルの最大サイズは1Mbyteです。

2.28.3. 基本設定

URLオフロード機能を利用するためのコマンドは以下のとおりです。設定変更を即時反映するには、url-offload updateの実行が必要です。

  • グローバルコンフィグモード

    項目

    説明

    url-offload dns-snooping protocol

    URLオフロードのDNSスヌーピング対象プロトコルの設定

    url-offload profile

    URLオフロードプロファイルの作成

  • インタフェースコンフィグモード

    項目

    説明

    ip url-offload profile

    URLオフロード判定の有効化

  • ルートマップコンフィグモード

    項目

    説明

    match ip url-offload

    URLオフロードデータベース条件

  • DHCPコンフィグモード

    項目

    説明

    wpad

    プロキシ自動設定ファイルのURL指定

  • URLオフロードコンフィグモード

    項目

    説明

    url

    URLオフロード定義ファイルの指定

    list

    URLリストの指定

    proxy-config

    プロキシサーバーやプロキシ定義ファイルの指定

    offload-protocol

    URLオフロード対象プロトコルの指定

    offload-scheme

    URLスキームチェックの設定

    source-interface

    送信元インタフェースの設定

    ssl-protocol

    SSLプロトコルの設定

    transport

    通信プロトコルの設定

    update-interval

    更新周期の変更

2.28.3.1. 外部定義ファイルの利用

起動後に外部定義ファイルを取得し、装置内にデータベースを作成します。作成したデータベースを使用してオフロード対象の判定を行います。

外部定義ファイル取得後は、一定の周期で外部定義ファイルを取得し、データベースを更新します。一度取得に成功した後は、その後の外部定義ファイルの取得に失敗した場合でも、その時点で保持しているデータベースを使用し、オフロード処理を行います。

外部定義ファイルを取得するには以下の設定が必要です。また、NetMeisterから取得することも可能です。

リスト 2.28.1 設定例1
外部定義ファイルのURLを指定
データベースの更新周期を1週間に設定

url-offload profile urlo-prof
  url https://example.com/OffloadList.xml
  update-interval 168
リスト 2.28.2 設定例2
NetMeisterにある外部定義ファイルを指定

url-offload profile urlo-prof
  url netmeister

NetMeisterからすぐに定義ファイルを反映する場合は、先にnm updateコマンドによりNetMeister情報を更新してから、url-offload updateコマンドを実行する必要があります。

起動後に外部定義ファイルを取得し、装置内にデータベースを作成します。作成したデータベースを使用してオフロード対象の判定を行います。

起動後、外部定義ファイルを取得しデータベース構築に成功するまでは、60秒周期に取得処理を行います。定義ファイルを取得できていない状態では、オフロード対象が存在しない状態の動作となります。

定義ファイルを取得できていない状態での動作:

  • プロキシサーバーなし

    • オフロード対象のパケットは通常のルーティングに従い送信されます。

  • プロキシサーバーあり

    • オフロード対象のパケットは廃棄されます。

2.28.3.1.1. Microsoft 365 ® の利用について

本機能はXMLベースのURLリストに対応しております。Microsoft 365 ® のURLリストは、2018年10月以降XMLベースからJSONベースのwebサービスに変更されており、そのままの設定では利用できません。

クラウドサービス「NetMeister」ではMicrosoft社のリストをXML方式に変換するサービスを運用しておりますので、URLリストの入手先を変更いただければMicrosoft社のURLリストを継続利用することが可能になります。(NetMeisterへのユーザー登録は不要です。)

2.28.3.2. 内部URLリストの利用

URLリストを利用することで、外部定義ファイルのオフロード対象を削除したり、追加したりすることができます。内部URLリストのみでオフロードすることも可能です。

URLリストの詳細説明は、URLフィルタリング機能を参照してください。ドメインをpermitで指定するとオフロード対象に、denyで指定するとオフロード対象外になります。

URLリストは外部定義ファイルよりも先に適用されるため、URLリストでpermit指定した通信は外部定義ファイルの内容に関わらずオフロード対象となり、URLリストでdeny指定した通信は外部定義ファイルの内容に関わらずオフロード対象外となります。

リスト 2.28.3 設定例
URLリストでオフロード対象を追加・削除

url-list urll-1 deny domain *.example1.com
url-list urll-1 permit domain *.example2.com

url-offload profile urlo-prof
  url https://example.com/OffloadList.xml
  list urll-1

この設定例では以下のとおり動作します。

  • *.example1.comの通信は、外部定義ファイルの設定によらずオフロードしません。

  • *.example2.comの通信は、外部定義ファイルの設定によらずオフロードします。

  • その他の通信は、外部定義ファイルに従います。

2.28.3.3. URLオフロードの設定

URLオフロードの判定には、経路制御処理とフィルタ処理の2つの処理があります。経路制御処理は、ポリシールーティングを使用してオフロード対象の経路変更を行います。フィルタ処理は、オフロード対象ドメインのIPアドレスキャッシュの作成や、オフロード対象外パケットの廃棄を行います。

リスト 2.28.4 設定例
経路制御処理として、ポリシールーティングの条件にURLオフロードを指定
フィルタ処理として、Tunnel0.0にURLオフロード設定を追加

route-map urlo-map permit 1
  match ip url-offload urlo-prof
  set interface GigaEthernet0.1

interface GigaEthernet2.0
  description LAN
  ip policy route-map urlo-map

interface Tunnel0.0
  description VPN
  ip url-offload profile urlo-prof

URLオフロードデータベース条件(match ip url-offload)の設定にURLリスト名またはアプリケーション名を指定することができ、特定の通信をURLオフロード対象にすることができます。また、複数ルートマップを作成することで、アプリーション単位で別々のインタフェースに振り分けることができます。

注釈

アプリケーション名を使用する場合、URLオフロードデータベースの指定コマンド(url)で"netmeister"をデータベースとして指定する必要があります。

リスト 2.28.5 設定例
URLオフロードデータベース条件へのアプリケーション名、URLリスト名の設定

route-map urlo-map-1 permit 10
  match ip url-offload urlo-prof app office
  set interface GigaEthernet1.0

route-map urlo-map-1 permit 11
  match ip url-offload urlo-prof url-list my_list
  set interface GigaEthernet2.0

設定可能なアプリケーション名は以下になります。

NetMeister画面表示上の名称

アプリケーション名

Office365

Office365

Skype/Teams

Skype/Teams

Windows Update

WindowsUpdate

Box

Box

G Suite

GSuite

Adobe Creative Cloud

AdobeCreativeCloud

Salesforce

Salesforce

Zoom

Zoom

WebEX

WebEX

ユーザー定義

UserDefined

注釈

XML形式のデータベース内容または、PACファイルURLをポリシールーティングの対象にする場合、URLオフロードデータベース条件の設定にdefaultを指定する必要があります。

リスト 2.28.6 設定例
route-map urlo-map-1 permit 10
  match ip url-offload urlo-prof url-list default
  set interface GigaEthernet1.0

2.28.3.4. URLオフロード対象の設定

オフロード対象に『HTTPS通信のみ』、『HTTPS通信とHTTP通信の両方』、『全プロトコル』を指定することができます。ただし、HTTPSとHTTP以外の通信に対して実際にオフロードが動作するのはNetMeisterと連携しているときのみとなります。

コマンドは以下のとおりです。

リスト 2.28.7 設定例1
オフロード対象を『HTTPS通信とHTTP通信の両方』に設定

url-offload profile urlo-prof
  offload-protocol both
リスト 2.28.8 設定例2
オフロード対象を『全プロトコル』に設定

url-offload profile urlo-prof
  offload-protocol any

2.28.4. 基本動作

URLオフロード機能の基本動作は以下となります。

2.28.4.1. オフロード対象

オフロード対象とオフロード動作については以下となります。

種別

データベース

プロトコル

動作

URL

NetMeister

URLリスト

(DNSスヌーピングあり)

HTTPS/HTTP

最初の通信からオフロード

QUIC

最初の通信からオフロード

上記以外

未サポート

NetMeister

URLリスト

(DNSスヌーピングなし)

HTTPS/HTTP

2番目の通信からオフロード

QUIC

未サポート

上記以外

未サポート

外部データ

HTTPS/HTTP

2番目の通信からオフロード

QUIC

未サポート

上記以外

未サポート

IP

NetMeister

URLリスト

外部データ

HTTPS/HTTP

最初の通信からオフロード

QUIC

最初の通信からオフロード

上記以外

最初の通信からオフロード

2.28.4.2. ルートマップ

ルートマップのmatch条件にURLオフロードプロファイルを設定した場合は以下の動作になります。

  1. セッションキャッシュを参照し、存在する場合はmatchしない

  2. アドレスキャッシュを参照し、「positive」が存在する場合はオフロード

  3. アドレスキャッシュを参照し、「negative」が存在する場合はmatchしない

  4. IPアドレスのデータベースを参照し、該当する場合はアドレスキャッシュを「positive」で作成してオフロード

  5. その他の場合は、matchしない

ルートマップにmatchしない場合は、次のシーケンスのルートマップを参照します。次がない場合は、ルーティングに従って転送されます。

2.28.4.3. URLオフロードプロファイル設定(インタフェース)

インタフェースにルートマップのmatch条件にURLオフロードプロファイルを設定した場合は以下の動作になります。

  1. データベースに該当する場合は、アドレスキャッシュを「positive」で作成(HTTP/HTTPSの場合はセッションキャッシュを作成)

  2. データベースに該当しない場合は、アドレスキャッシュを「negative」で作成

オプション指定時の対象プロトコル、動作は以下のとおりです。

オプション

対象

種別

unmatch-action discard

HTTP/HTTPS

データベースに該当しない場合は廃棄

unmatch-action discard no-negative-cache

すべて

データベースに該当しない場合は廃棄し、アドレスキャッシュ「negative」は作成しない

match-action ignore-filter

すべて

データベースに該当する場合は、フィルタを無視して通過

2.28.4.4. DNSスヌーピング

DNSスヌーピングに対応しています。
通信前の名前解決の結果から、アドレスキャッシュを作成します。これにより、最初の通信からオフロードが可能となります。
また、QUIC(UDPポート443)のドメイン名でのオフロードが可能となります。
デフォルトでは有効となっています。

項目

説明

url-offload dns-snooping protocol

DNSスヌーピング機能で作成するプロトコルを選択
(グローバルコンフィグモード)

注釈

  • IX-Rが名前解決を行う必要があるため、プロキシDNSを使用し、端末のDNSサーバはIX-Rを指定してください。

  • 名前解決を行わない場合は、従来の動作となります。

  • 装置を再起動した場合は、端末側が名前解決を行わない場合があります。この場合は、DNSスヌーピングは利用できません。

  • セキュアDNSを使用している場合は、応答を参照できないため、DNSスヌーピングは動作しません。

2.28.5. 構成別設定例

URLオフロード機能は、プロキシサーバーのあり/なしで設定方法が異なります。

下図の構成を例として、プロキシサーバーなし/ありの場合それぞれについて説明します。

../_images/31-4_url-offload2.svg

図 2.28.2 構成例

2.28.5.1. プロキシサーバー利用なし

すべてのインターネットアクセス通信をTunnel0.0にルーティングするように設定したうえで、オフロード対象の通信のみ、ポリシールーティングで出力インタフェースを変更します。ポリシールーティングの対象を指定するためのmatch条件にはurl-offloadを指定します。また、Tunnel0.0を通過するトラフィックがオフロード対象かを判断するために、Tunnel0.0にURLオフロードを設定します。

リスト 2.28.9 設定例
通常のパケットはTunnel0.0に出力。
オフロード対象のパケットの場合はGigaEthernet0.1に出力。

ip route default Tunnel0.0

url-offload profile urlo-prof
  url https://example.com/OffloadList.xml

! ルートマップのmatch条件にURLオフロードを指定
route-map urlo-map permit 1
  match ip url-offload urlo-prof
  set interface GigaEthernet0.1

interface GigaEthernet0.1
  description Internet
  encapsulation pppoe
  ppp binding ppp1
  ip address ipcp
  ip napt enable

! LAN側インタフェースで、ポリシールーティングを有効
interface GigaEthernet2.0
  description LAN
  ip address 192.168.1.254/24
  ip policy route-map urlo-map

! Tunnel0.0にURLオフロードを指定
interface Tunnel0.0
  description VPN
  tunnel mode ipsec
  ip unnumbered GigaEthernet2.0
  ip url-offload profile urlo-prof

2.28.5.2. プロキシサーバー利用構成

あらかじめ端末側でオフロード対象に対する「プロキシの例外」を設定しておきます。ver9.6以降では、プロキシの自動構成スクリプトを使うことで、「プロキシの例外」の設定を自動的に行うことができます。

プロキシ宛てを含むイントラネット内の通信をTunnel0.0に、インターネット宛ての通信をGigaEthernet0.1にルーティングすることで、「プロキシの例外」の通信をオフロード対象としてインターネットに直接ルーティングします。

また、本来オフロード対象ではない通信がインターネットに直接ルーティングされないように、GigaEthernet0.1にURLオフロードを設定します。URLオフロード機能によって、オフロード対象ではない通信を破棄します。なお、URLオフロード機能ではHTTPS通信またはHTTP通信しか識別できないため、それ以外の通信を制限したい場合は、アクセスリストによって明示的に制限します。例ではHTTPSとVPN以外の通信がインターネットに直接ルーティングされないように制限しています。「match-action ignore-filter」を設定することにより、オフロード対象の通信の場合は、アクセスリストにて許可していない場合でも、通信が許可されます。

リスト 2.28.10 設定例
イントラネット内のパケットはTunnel0.0に出力。
その他のパケットはGigaEthernet0.1に出力
オフロード対象に該当しないパケットをGigaEthernet0.1に出力した場合は廃棄

ip route default GigaEthernet0.1
ip route 192.168.0.0/16 Tunnel0.0

ip access-list urlo-acl permit 50 src any dest any
ip access-list urlo-acl permit udp src any sport eq 500 dest any dport any
ip access-list urlo-acl permit udp src any sport any dest any dport eq 500
ip access-list urlo-acl permit udp src any sport eq 4500 dest any dport any
ip access-list urlo-acl permit udp src any sport any dest any dport eq 4500
ip access-list urlo-acl deny ip src any dest any

url-offload profile urlo-prof
  url https://example.com/OffloadList.xml

! インターネット側インタフェースで、
! 廃棄オプションを有効にしてURLオフロードを設定
interface GigaEthernet0.1
  description Internet
  encapsulation pppoe
  ppp binding ppp1
  ip address ipcp
  ip napt enable
  ip filter urlo-acl 1 out
  ip url-offload profile urlo-prof unmatch-action discard no-negative-cache match-action ignore-filter

interface Tunnel0.0
  description VPN
  tunnel mode ipsec
  ip unnumbered GigaEthernet2.0

2.28.6. プロキシ例外設定の自動化

プロキシサーバー利用構成では、端末側にプロキシ例外の設定が必要になります。プロキシ例外の設定は、端末に直接設定する以外に、PACファイルと呼ばれる「プロキシ例外条件を記述したファイル」を端末に読み込ませることでも設定できます。

PACファイルを利用して端末側でのプロキシ例外設定の自動化を行うことができます。URLオフロード対象のプロキシ例外の条件を記述したPACファイルをIX-Rルータ内に自動的に生成し、端末に配信します。

端末側では、IX-Rルータ内のPACファイルのURL(http://<IX-RルータのIPアドレス>:<ポート番号>/proxy.pac)を設定する必要がありますが、DHCPを利用している環境であれば、PACファイルのURLをDHCPで端末に通知することもできます。

2.28.6.1. PACファイルの生成

URLオフロード対象をプロキシの例外とするためのPACファイルを自動的に生成します。URLオフロード対象の例外設定だけを含むPACファイルを新規に生成したり、既存のPACファイルをもとにしてURLオフロード対象の例外設定を追加したPACファイルを生成したりできます。

URLオフロード対象の例外設定だけを含むPACファイルを新規に生成する場合は、通常のインターネットアクセス時に使用するプロキシサーバーのアドレスを設定します。

リスト 2.28.11 設定例
プロキシサーバーのアドレスを指定

url-offload profile urlo-prof
  proxy-config server 192.168.80.80:8080

新規にPACファイルを生成する場合、下記のようなPACファイルが生成されます。

リスト 2.28.12 生成PACファイル例
function FindProxyForURL (url, host) {
  if (isPlainHostName(host)) {
    return "DIRECT";
  }

  /* URL-OFFLOAD */
  if ((url.startsWith("https:") || url.startsWith("wss:")) && (
      isInNet(host, "172.16.0.0", "255.255.0.0") ||
        :
      shExpMatch(host, "*.offload.com") ||
        :
      )) {
    return "DIRECT";
  }

  return "PROXY 192.168.80.80:8080";
}

既存のPACファイルをもとにしてURLオフロード対象の例外設定を追加したPACファイルを生成する場合は、既存PACファイルのURLを設定します。IX-Rルータから、当該のPACファイルにアクセスできる必要があります。

リスト 2.28.13 設定例
既存のPACファイルを指定

url-offload profile urlo-prof
  proxy-config pac-file http://example.com/proxy.pac

既存のPACファイルに例外を追加する場合、既存PACファイルの「FindProxyForURL()関数」の先頭にURLオフロード対象の例外設定が追加されます。例外設定を追加する位置をファイル内で指定したい場合は、既存PACファイルに「/* URL-OFFLOAD */」というコメント行を追加します。追加したコメント行の直後にURLオフロード対象の例外設定が追加されます。

リスト 2.28.14 既存PACファイル例
挿入位置指定なし

function FindProxyForURL (url, host) {
  if (既存の判定文) {
    return "PROXY proxy.example.com:8080";
  }

  return "PROXY 192.168.80.80:8080";
}
リスト 2.28.15 生成PACファイル例
function FindProxyForURL (url, host) {
  /* URL-OFFLOAD */
  if ((url.startsWith("https:") || url.startsWith("wss:")) && (
      isInNet(host, "172.16.0.0", "255.255.0.0") ||
        :
      shExpMatch(host, "*.offload.com") ||
        :
      )) {
    return "DIRECT";
  }

  if (既存の判定文) {
    return "PROXY proxy.example.com:8080";
  }

  return "PROXY 192.168.80.80:8080";
}
リスト 2.28.16 既存PACファイル例
挿入位置指定あり

function FindProxyForURL (url, host) {
  if (既存の判定文) {
    return "PROXY proxy.example.com:8080";
  }

  /* URL-OFFLOAD */

  return "PROXY 192.168.80.80:8080";
}
リスト 2.28.17 生成PACファイル例
function FindProxyForURL (url, host) {
  if (既存の判定文) {
    return "PROXY proxy.example.com:8080";
  }

  /* URL-OFFLOAD */
  if ((url.startsWith("https:") || url.startsWith("wss:")) && (
      isInNet(host, "172.16.0.0", "255.255.0.0") ||
        :
      shExpMatch(host, "*.offload.com") ||
        :
      )) {
    return "DIRECT";
  }

  return "PROXY 192.168.80.80:8080";
}

URLオフロード用のPACファイル生成は、外部定義ファイルを取得した直後に行われます。既存のPACファイルを参照する場合は、PACファイル生成時に最新の既存PACファイルを取得してからPACファイルを生成します。外部定義ファイルの取得に失敗した場合や、既存のPACファイルの取得に失敗した場合は、PACファイルは再生成せずに、すでに生成済みのPACファイルを維持します。

2.28.6.2. スキームチェックの設定

URLのスキームの対象はデフォルトでhttpsとwssをオフロード対象にしています。新しいURLスキームに対応したい場合や、除外したいURLスキームがある場合、以下のように設定してください。

リスト 2.28.18 設定例
httpとftpをURLスキームのチェック対象に設定する

url-offload profile urlo-prof
  offload-schem permit http ftp

2.28.6.3. PACファイルの配信

IX-Rルータ内に生成されたPACファイルは、"http://<IX-RルータのIPアドレス>:<ポート番号>/proxy.pac"にアクセスすることで端末から参照できます(IX-RルータでHTTPサーバー機能を有効にする必要があります。また、HTTPサーバーのポート番号を変更した場合はPACファイルへのアクセス時のポート番号も変更後のポート番号になります)。 IX-RルータのDHCPサーバー機能を利用している場合、IX-Rルータが生成したPACファイルの上記URLをDHCPで端末に配信することができます。上記URLを端末利用者が端末に直接設定することも可能です。

リスト 2.28.19 設定例
DHCPでIX-Rルータ内に生成したPACファイルのURLを通知

ip dhcp profile dhcp-prof
  wpad auto
リスト 2.28.20 配布されるURL例
DHCPが動作しているインタフェースのIPアドレスが192.168.1.254で、HTTPサーバーのポート番号がデフォルトの80の場合

配布されるURL "http://192.168.1.254:80/proxy.pac"

2.28.6.4. 端末側の設定

端末側の設定は、端末のOSやアプリケーションに依存します。例として、Windows 10におけるInternet Explorer 11の設定を紹介します。

  1. 「ツール」から「インターネット オプション」を選択する

  2. 「インターネット オプション」ダイアログの「接続」タブを選択する

  3. 「LANの設定」を選択する

  4. DHCPでPACファイルURL通知を行う場合は、自動構成欄の「設定を自動的に検出する」にチェックする。PACファイルのURLを直接設定する場合は、自動構成欄の「自動構成スクリプトを使用する」にチェックし、アドレス欄に「http://<IX-RルータのIPアドレス>:<ポート番号>/proxy.pac」を入力する。

  5. 「OK」を選択して設定を完了する。

上記の設定後、端末はIX-Rルータ内のPACファイルを参照して例外設定に従って動作します。

2.28.6.5. 設定例

PACファイルを生成して、IX-Rルータ内のPACファイルURLをDHCPで端末に配信する場合の設定例を紹介します。

リスト 2.28.21 設定例
URLオフロードの例外設定のみを含むPACファイルを新規に生成する場合

! DHCPでPACファイルURL通知を有効化
ip dhcp profile dhcp-prof
  wpad auto

! プロキシサーバーのアドレスを指定
url-offload profile urlo-prof
  proxy-config server 192.168.80.80:8080

! DHCPとHTTPサーバーを有効化
interface GigaEthernet2.0
  description LAN
  ip dhcp binding dhcp-prof
  http-server ip enable
リスト 2.28.22 設定例
既存PACファイルにURLオフロードの例外を追加してPACファイルを生成する場合

! DHCPでPACファイルURLを通知
ip dhcp profile dhcp-prof
  wpad auto

! 既存のPACファイルを指定
url-offload profile urlo-prof
  proxy-config pac-file http://example.com/proxy.pac

! DHCPとHTTPサーバーを有効化
interface GigaEthernet2.0
  description LAN
  ip dhcp binding dhcp-prof
  http-server ip enable

2.28.7. 運用情報

2.28.7.1. アクセスログの取得

ロギング機能を使用することにより、オフロードされた通信のログを残すことが可能です。なお以下のログを残すには、ロギングレベルをwarnではなくnoticeに設定する必要があります。

ある宛先に対して最初に通信を始める場合、apa - 024が表示されます。それ以降の通信では、apa - 025が表示されます。

プロキシサーバー利用なしの場合、apa - 024の通信はまだオフロードされておらず、apa - 025の通信のみがオフロードされています。プロキシサーバー利用構成では、apa - 024とapa - 025ともにオフロードされています。

リスト 2.28.23 設定例
syslog function apa notice
リスト 2.28.24 動作例
2024-08-27T14:34:12.316626+09:00 apa - 024 - Start offload, 192.168.160.1:63609 > 172.16.200.187:443, www.example2.com, application undefined
2024-08-27T14:34:13.084931+09:00 apa - 025 - Do offload, prot tcp, 192.168.160.1:63614 > 172.16.200.187:443, application undefined

2.28.7.2. オフロード対象の取得

オフロード対象の宛先は以下で確認することができます。

  • CLIの場合

    • show running-config url-list

    • show url-offload database

前者のコマンドで、装置内に設定しているURLリストの内容を表示します。後者のコマンドで、外部定義ファイルをもとに生成したオフロード用URLリストを表示します。

  • Webコンソールの場合

    • URLオフロード(保守管理)

装置内に設定しているURLリストの内容と、外部定義ファイルをもとに生成したオフロード用URLリストを、合わせて表示します。