2.1. 基本操作

2.1.1. 装置の起動

UNIVERGE IX-R シリーズでは、電源ON時にハードウェアの自己診断を行い、その後プログラムファイルを起動します。

ハードウェアの診断でFailと表示された場合は装置交換が必要です。 温度異常の場合は設置環境の見直しが必要です。 起動時に異常がある場合はshow error-logコマンドでも確認可能です。

ルータが正常に起動するとloginプロンプトが表示されます。

初期状態でログインすると初期ユーザー登録モードになり、ユーザー登録と保存、再起動のみが行えます。

注釈

UNIVERGE IX-V シリーズでは、ハードウェア自己診断は未サポートです。

2.1.2. コマンド入力

本装置は、CLI(Command Line Interface)でコマンドを受け付けます。

リスト 2.1.1 入力例
Router# help

コマンドは、表示されているプロンプトに続けて、1つまたは複数のコマンドをスペースで区切って入力します。 パラメータが必要なコマンドも、コマンドとパラメータの間をスペースで区切って入力します。 エンターキーで1行ずつコマンドを実行します。

入力は、1バイト文字(半角英数字と記号)で行います。 一部のコマンドを除いて、大文字小文字の区別はありません。 なお、任意の文字列を入力するコマンドで「”」や「?」は利用できません。

コマンドが間違っている場合には、エラーメッセージを出力します。

リスト 2.1.2 入力例
Router# halp [Enter]
% halp  -- Invalid command.

2.1.2.1. 補完機能・省略機能

本装置のCLIには補完・省略機能があります。

数文字入力して [TAB] キーを押すことで、完全な形のコマンドに補完することが可能です。

選択肢が1つしかない場合は、コマンドが補完されます。

リスト 2.1.3 入力例
Router# co [TAB]
Router# configure

選択肢が複数ある場合は、入力可能なコマンドが表示されます。(「?」でも同じ効果)

リスト 2.1.4 入力例
Router# s [TAB]
  svintr-config  -- Enters global configuration mode (supervisor interrupt)
  show           -- Show running system information

入力した文字列で始まるコマンド・パラメータが1つだけの場合は、省略したまま[Enter]キーで実行することも可能です。

リスト 2.1.5 入力例
Router# co [Enter]
  configure を実行
Router# sh ver [Enter]
  show version を実行

2.1.2.2. その他の便利機能

他にもヘルプやコマンド履歴などの便利な機能があります。

項目

説明

「?」キー

ヘルプを表示します。

「↑」「↓」キー

最近実行したコマンドの履歴を表示

「Ctrl」+「c」キー または 「Ctrl」+「d」キー

コマンドライン上の文字入力をキャンセル

「Ctrl」+「z」キー

EXECモードに遷移(後述)

「Ctrl」+「y」キー

ログアウト

これ以外にもhelpコマンドで表示されるショートカットキーに対応しています。

2.1.2.3. 表示コマンド

showで始まる表示コマンドを実行すると、画面上に結果を表示します。 表示が1画面に収まらない場合は、表示の途中で「--More--」を表示します。

リスト 2.1.6 表示例
--More--

Moreが表示されて表示が停止している間、以下の操作が可能です。

項目

説明

スペースキー

次の数行を表示します。

「Enter」キー

1行ずつ表示します。

「q」キー、「Ctrl」+「c」キー

表示を中止します。

大量のログ収集を行う場合、表示がMoreで停止しないほうが便利です。 「terminal length 0」コマンドを設定することで、一度にすべて表示させることができます。 この設定は、ログアウトまたは「terminal length 24」で元に戻ります。

2.1.3. 実行モード

本装置は、モードコンフィグを採用しています。 すべてのコマンドは、適切なモードに遷移して実行する必要があります。 現在のモードはプロンプトでも確認できます。

注釈

以下、プロンプトの「Router」部分は、hostnameコマンドで変更されます。 設定した文字列に切り替わります。

モード

説明

初期ユーザー登録モード

初回起動時に入るモードです。ユーザーの追加コマンドを利用できます。
プロンプトは「Router(init)# 」です。

EXECモード

ログインして最初に入るモードです。ルータの状態表示や装置の再起動(reload)コマンドを利用できます。
ルータの設定変更を行う場合は、最初にconfigureコマンドを入力してグローバルコンフィグモードに移動してください。
プロンプトは「Router# 」です。

グローバルコンフィグモード

ルータの設定変更を行う基本のモードです。ルータ全体に関わる設定、確認等ができます。
プロンプトは「Router(config)# 」です。

デバイスコンフィグモード

デバイス単位の設定、確認等を行うためのモードです。
プロンプトは「Router(config-GigaEthernet0)# 」のようにデバイス名を表示します。

インタフェースコンフィグモード

インタフェース単位の設定、確認等を行うためのモードです。
プロンプトは「Router(config-GigaEthernet0.0)# 」のようにインタフェース名を表示します。

サービスコンフィグモード

マルチベンダ管理機能などの拡張機能の設定をJSON形式で行うためのモードです。
プロンプトは表示しません。
UNIVERGE IX-V シリーズでは、サービスコンフィグモードは利用できません。

その他、PPPやDHCP、BGP、IKEv2など、さまざまな機能が専用のモードを用意しています。 詳細はそれぞれの機能の説明を参照してください。

../_images/mode_transition_chart.svg

図 2.1.1 モード遷移チャート

すべてのモード(サービスコンフィグモード除く)は、exitコマンドで抜けることができます。 「Ctrl」+「z」キーで、どのモードからでもEXECモードに遷移したり、configureコマンドで、どのモードからでもグローバルコンフィグモードに遷移したりすることも可能です。 サービスコンフィグモードからは「Ctrl」+「d」で抜けることができます。 「Ctrl」+「y」キーで、どのモードからでもログアウトすることができます。

このほか特殊なブートモニタモードがあります。 スーパーリセットの項目で確認してください。

注釈

UNIVERGE IX-V シリーズでは、ブートモニタモードは未サポートです。

2.1.3.1. デバイスコンフィグモードとインタフェースコンフィグモード

装置全体で有効な設定はグローバルコンフィグモードで行いますが、デバイスやインタフェースへの設定は、以下のモードで行います。

デバイスの設定

GE0などのデバイスを設定したい場合は、以下のコマンドで該当のデバイスコンフィグモードに移動します。

注釈

GE1の場合はGigaEthernet1のように読み替えてください。

項目

説明

device GigaEthernet0

装置前面のGE0ポートのデバイス設定。
speed・duplexの設定、SWHUBのポートVLANの設定やリンクアグリゲーションの設定などを行います。

device USB0

装置前面のUSB0ポートのデバイス設定

インタフェースの設定

GE0などのデバイス上のインタフェースを設定したい場合は、以下のコマンドで該当のインタフェースコンフィグモードに移動します。

注釈

  • GE1の場合はGigaEthernet1のように読み替えてください。

  • GE2をSW-HUBデバイスとしています。

項目

説明

interface GigaEthernet0.0

GE0の基本インタフェース設定
IPv4やIPv6のアドレス設定やNATアドレス変換設定等の特定インタフェースに関連する設定を行います。

interface GigaEthernet0.1

GE0のサブインタフェース設定
PPPoEやタグVLANなど、複数設定可能なインタフェースの設定

interface GigaEthernet2:1.0

ポートVLANでの基本インタフェース設定
SW-HUBデバイスでポートVLANを設定した場合

interface GigaEthernet2:1.1

ポートVLANでのサブインタフェース設定
SW-HUBデバイスでポートVLANを設定した場合

「.0」で終わるインタフェースを基本インタフェース、「.1以上」で終わるインタフェースをサブインタフェースと呼びます。 一部設定できるコマンドが異なります。

このほかにも、LoopbackやNull、Tunnel、BVIなどのインタフェース設定があります。

2.1.3.2. サービスコンフィグモード

注意

UNIVERGE IX-V シリーズでは、サービスコンフィグモードは利用できません。

マルチベンダ管理機能や今後の機能拡張時のコンフィグをJSON形式で直接入力するモードです。

項目

説明

service config import json

サービスコンフィグモードへの移行

サービスコンフィグは主にNetMeisterから設定される情報を保存します。 利用者が作成したJSONファイルを登録することも可能ですが、動作保証の対象外とします。

本モードで入力した内容は直接不揮発性メモリに保存されます。 またshow running-config、show startup-configでは表示されません。

サービスコンフィグは最大1Mバイトまで入力できます。

サービスコンフィグモードでは1バイト文字(半角英数字と記号)のみ入力可能です。 「?」「tab」キーは入力できません。 サービスコンフィグを登録する際、ユーザー側でこれらのキャラクタがないようなコンフィグを用意してください。

運用中は本モードを使用しないでください。通信に影響が出る場合があります。

2.1.3.3. IX互換モード

IX互換モードは、主にIPsecの設定でUNIVERGE IXシリーズのコンフィグを流用する際に利用します。

リスト 2.1.7 入力例
Router(config)# ix-compatibility
% IX compatibility mode turns ON.
以下のコマンドにて、UNIVERGE IXシリーズと同じ入力形式やデフォルト値になります。
入力されたコンフィグは、本装置の形式で反映されます。
  • グローバルコンフィグモード

    • ike proposal

    • ipsec autokey-map

    • ipsec dynamic-map

  • インタフェースコンフィグモード

    • ipsec policy

2.1.4. 設定の確認

本装置では、装置起動時に読み込む設定(startup-config)と、現在動作中の設定(running-config)の2つの設定があります。

2.1.4.1. running-configの確認

running-configは以下のコマンドで表示することができます。

リスト 2.1.8 入力例
Router(config)# show running-config
! NEC IX-R Series IX-Rxxx Software, Version X.X.X, RELEASE SOFTWARE
    :

何も設定していない状態でも、デバイスと基本インタフェースは表示されます。

2.1.4.2. startup-configの確認

startup-configは、以下のコマンドで表示することができます。

設定を保存している場合は、保存したときのrunning-configが表示されます。

リスト 2.1.9 入力例
Router(config)# show startup-config
! NEC IX-R Series IX-Rxxx Software, Version X.X.X, RELEASE SOFTWARE
    :

初期状態では設定は保存されていないため、以下のように表示されます。

リスト 2.1.10 入力例
Router(config)# show startup-config
% Non-volatile configuration memory is not present

2.1.5. 設定の保存

設定コマンドはすべてrunning-configを変更するコマンドです。 変更した設定を確定し、再起動しても設定変更が反映されているようにするには、設定の保存が必要です。

設定の保存はグローバルコンフィグモードで、以下のコマンドで行います。

保存中は再起動したり、コマンドを入力したりしないようにしてください。

リスト 2.1.11 入力例
Router(config)# write memory
Building configuration...
% Warning: do NOT enter CNTL/Z while saving to avoid config corruption.
Router(config)#

2.1.6. 設定の削除

設定の削除はグローバルコンフィグモードで、以下のコマンドで行います。

リスト 2.1.12 入力例
Router(config)# erase startup-config
Are you sure you want to erase the startup-configuration? (Yes or [No]): yes

設定を削除しても、running-configは変更されません。

初期状態に戻すためには、コンフィグを削除したあと、そのまま再起動してください。

リスト 2.1.13 入力例
Router(config)# reload
% Warning: do NOT enter CNTL/Z while saving to avoid config corruption.
Notice: The router will be RELOADED. This is to ensure that
        the peripheral devices are properly initialized.
Are you sure you want to reload the router? (Yes or [No]): yes

2.1.7. スーパーリセット

パスワードを忘れてしまった場合に、すべての設定を消去することができます。

これには、以下の特殊なモードを使用します。

ブートモニタモード

ルータとして動作する前のモードです。
このモードでは、ルータの立ち上げ設定およびハードウェア情報の確認等ができます。
起動時(「factory mode (Input Ctrl+C):」表示中)に [Ctrl] + [c] キーを押すことで遷移することができます。

ccコマンドですべての設定を削除したあと、bコマンドで起動すると工場出荷状態に戻ります。

項目

説明

cc

コンフィグを消去します。

b

装置の起動

また、INITスイッチによるスーパーリセットも可能です。
スーパーリセットの詳細については、取扱説明書を参照してください。

注釈

UNIVERGE IX-V シリーズでは、ブートモニタモード・INITスイッチは未サポートです。

2.1.8. 設定例

グローバルコンフィグモードでアカウントと装置名を設定し、インタフェースコンフィグモードでGE0とGE1にIPアドレスを設定して有効化するときの設定例です(各設定の説明は別途)。

最後に設定を保存しています。

リスト 2.1.14 設定例
Router# configure
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router(config)# username user1 password plain *********
Router(config)# hostname HOST1
HOST1(config)# interface GigaEthernet0.0
HOST1(config-GigaEthernet0.0)# ip address 192.168.0.254/24
HOST1(config-GigaEthernet0.0)# no shutdown
HOST1(config-GigaEthernet0.0)# exit
HOST1(config)# interface GigaEthernet1.0
HOST1(config-GigaEthernet1.0)# ip address 192.168.1.254/24
HOST1(config-GigaEthernet1.0)# no shutdown
HOST1(config-GigaEthernet1.0)# exit
HOST1(config)# write memory

以降の章の設定例では、プロンプトは省略して表示します。