2.15. ルーティングの設定

パケット転送は、ルーティングテーブル情報に基づき実行します。このため、UNIVERGE IX-R/IX-V シリーズをルータとして動作させるためには、ルーティングテーブルへのルート登録が必要となります。登録するルートは、次のように大別することができます。

  • ダイレクトルート(Connected)

    • インタフェースのサブネットアドレス

  • スタティックルート(Static)

    • 手動で設定する固定的なルート

  • ダイナミックルート(Dynamic)

    • ダイナミックルーティングプロトコルを使用し外部から学習したルート

複数の同一ルートが存在した場合は、各ルーティングプロトコル(ダイレクト、スタティックルートを含む)の最適経路計算やルーティングプロトコル間の優先度に基づいて最適と判断されたものが選択されルーティングテーブルへ登録されます。

これ以外にもルート解決方法として、ポリシールーティングによるルート設定があります。

2.15.1. 経路制御とディスタンス

ルーティングテーブルと各ルーティングプロトコル(ダイレクトルート、スタティックルートを含む)との経路のやりとり(経路制御)は、ルートタイプを基に実行されます。

ルートタイプは、ルーティングテーブル内に登録されたルートとともに管理されている情報源のルーティングプロトコルを示す情報で、以下の種類があります。

  • Connected(ダイレクトルート)

  • Static(スタティックルート)

  • RIPv2

  • OSPFv2

  • BGP external

  • BGP internal

以下にルートタイプによる経路制御の動作概要について説明します。

各ルーティングプロトコルは、独立して動作し、学習(設定)した経路から求めた最適経路をルートタイプとともにルーティングテーブルに書き込みます。

したがって、異なるルーティングプロトコルが、ルーティングテーブルに同一経路を書き込もうとする場合が考えられます。

このような場合、情報源を示すルートタイプの優先度(ディスタンス)に従い、どのルーティングプロトコルからの経路を書き込むかを決定します。

デフォルトのディスタンスは、次のとおりです。

ルートタイプ

ディスタンス

優先度

Connected

0(固定値)

↑高

Static

1

BGP external

20

OSPF intra-area

110

OSPF inter-area

110

OSPF external

110

OSPF nssa-external

110

RIPv2

120

BGP internal

200

↓低

ディスタンスの変更は、次のコマンドで登録します。

  • グローバルコンフィグモード

    項目

    説明

    ip/ipv6 route

    Static経路のディスタンス値変更
    (distance オプションにより変更)
  • RIPコンフィグモード

    項目

    説明

    distance

    RIPv2経路のディスタンス値変更

  • OSPFコンフィグモード

    項目

    説明

    distance

    OSPF経路のディスタンス値変更

  • BGPアドレスファミリモード

    項目

    説明

    distance

    BGP経路のディスタンス値変更

  • クリアコマンド

    項目

    説明

    clear ip rip process

    ディスタンス変更時のRIPプロセス再起動

    clear ip ospf process

    ディスタンス変更時のOSPFプロセス再起動

  • 設定例

    リスト 2.15.1 設定例:Static経路のディスタンスを変更
    ip route default 192.168.0.254 distance 240
    
    リスト 2.15.2 設定例:RIPv2経路のディスタンスを変更(要RIPプロセス再起動)
    ip router rip
      distance 100
    
    clear ip rip process
    
    リスト 2.15.3 設定例:OSPF経路のディスタンスを変更(要OSPFプロセス再起動)
    ip router ospf 1
      distance external 200 inter-area 150 intra-area 150 nssa-external 200
    
    clear ip ospf process
    
    リスト 2.15.4 設定例:BGP経路のディスタンスを変更
    router bgp 10
      address-family ipv4 unicast
        distance ebgp 10 ibgp 100
    

2.15.2. イコールコストマルチパス

イコールコストマルチパスとは、同一終点宛にコストの等しい複数の経路(パス)が存在するということを意味します。このような場合においては、パケット転送に最適経路(ベストパス)だけを使用する方法と、複数同時に使用してロードバランシングを行う方法が考えられます。

ロードバランシングとは、複数の経路を利用し簡易的に負荷を分散させる機能です。以下のロードバランシング方式をサポートします。

  • Best-Path (ロードバランシング無効)

    デフォルト動作として最適経路のみが利用され、負荷分散は行われません。

    Dest

    Nexthop

    cost

    172.16.0.0/16

    10.1.2.100

    25

    172.16.0.0/16

    10.1.2.200

    25

    ../_images/15_routing12.svg
  • Per-Packet

    パケット単位で複数経路を順番に(ラウンドロビンで)利用します。負荷が均等に分散される可能性が高くなりますが、同一フローのパケットが複数経路を経由することになるためパケット到着順が不定となりエンドーエンドの通信で性能が低下する可能性があります。

    Dest

    Nexthop

    cost

    172.16.0.0/16

    10.1.2.100

    25

    172.16.0.0/16

    10.1.2.200

    25

    ../_images/15_routing13.svg
  • Per-Flow-Fix-Interface

    フロー(アドレス/プロトコル/ポートの組の5-tupple)単位で複数経路からランダムに1つを選択して利用します。同一フローのパケットに対して同じ経路を経由させることが出来ますが、複数フローの負荷が同一の経路に偏る可能性があります。

    Dest

    Nexthop

    cost

    172.16.0.0/16

    10.1.2.100

    25

    172.16.0.0/16

    10.1.2.200

    25

    ../_images/15_routing14.svg

ロードバランシングの設定は以下のコマンドを使用します。

コマンド

説明

no ip multipath

ロードバランシング無効。(デフォルト動作)

ip multipath per-packet

ロードバランシング方式Per-Packetで動作します。

ip multipath per-flow-fix-interface

ロードバランシング方式Per-Flow-Fix-Interfaceで動作します。

注釈

  • IPv4のイコールコストマルチパスとすることができる経路数は最大8となります。値は変更できません。

  • IPv6はロードバランシングに対応していません。

  • TCP等のセッション毎にロードバランシングを行う方式(Per-Session)には対応していません。

2.15.2.1. 各ルーティングプロトコルのイコールコストマルチパス設定

  • IPv4スタティックルート

    Ver.1.2以降イコールコストマルチパスに対応しています。

    1つの宛先経路に対して、メトリック値(metric)とディスタンス値(distance)が同じスタティックルートを複数設定することによりイコールコストマルチパスとなります。

    リスト 2.15.5 設定例
       ip route default 192.168.0.254 metric 10
       ip route default Tunnel0.0 metric 10
    
  • BGP

    Ver.1.2以降イコールコストマルチパスに対応しています。

    デフォルトでは、イコールコストマルチパスとはなりません。

    BGPのイコールコストマルチパス設定方法およびイコールコストマルチパスとなる条件については、ルータ設定のBGPの項を参照してください。

  • OSPF

    Ver.1.3以降イコールコストマルチパスに対応しています。

    コスト計算の結果、宛先へのコストが同じだった場合に、イコールコストマルチパスとして動作します。

2.15.3. スタティックルート

スタティックルーティングは、コマンドにより経路情報をあらかじめ装置に設定しておくことにより、ルーティングを行います。スタティックルーティングでは、次の情報を設定します。

  • ディスティネーション(サブネットアドレス(プレフィックス)、マスク長(プレフィックス長))

  • ネクストホップアドレス

  • 送出先インタフェース

    • 出力先がGigaEthernetの場合に送出先インタフェースを指定する場合は、ネクストホップアドレスを指定してください。送出先インタフェースのみ設定した場合は、パケットの送出先が分からないため、正常にルーティングできない場合があります。

  • メトリック値、ディスタンス値、タグ値

スタティックルートの設定および確認は次のコマンドを使用します。

  • グローバルコンフィグモード

    項目

    説明

    ip route

    IPv4スタティックルートの登録

    ipv6 route

    IPv6スタティックルートの登録

  • 表示コマンド

    項目

    説明

    show ip static-routes

    IPv4スタティックルートの表示

    show ipv6 static-routes

    IPv6スタティックルートの表示

    リスト 2.15.6 設定例:デフォルトルートの設定
    ip route default 192.168.0.254
    ip route default Tunnel0.0
    !
    ipv6 route default fe80::1%GigaEthernet0.0
    ipv6 route default Tunnel0.0
    

注釈

  • IPv6 では、ネクストホップアドレスを指定する場合には、通常はリンクローカルアドレスを使用します。

  • リンクローカルアドレスは、ネクストホップルータの設定を確認する他、ping6 コマンドを使用して調査することも可能です。

2.15.4. RIPv2

RIPv2は、AS(Autonomous System)内部で動作する IGP(Interior Gateway Protocol)の1つです。

注釈

UNIVERGE IX-R/IX-V シリーズ Ver1.3 では RIPv2 はベータ版となっており一般運用での使用は未サポートです。
サポートする RIP のプロトコルバージョンは RIPv2 のみとなり RIPv1 は廃止となっております。

2.15.4.1. ルータの設定

2.15.4.1.1. RIPv2の起動

RIPv2を起動するコマンドは、ip router ripコマンドです。
RIPコンフィグモードに移行すると同時にRIPv2が起動します。
また、RIPv2を動作させるインタフェースと送信および受信の動作指定を各インタフェースにて、ip rip enable コマンドにより設定します。
  • グローバルコンフィグモード

    項目

    説明

    ip router rip

    RIPv2起動・RIPコンフィグモード移行

  • インタフェースコンフィグモード

    項目

    説明

    ip rip enable

    RIPv2インタフェースの登録

    ip rip send

    RIPv2送信設定

    ip rip receive

    RIPv2受信設定

    ip rip split-type

    スプリットホライズンのタイプの設定

    リスト 2.15.7 設定例
    GigaEthernet1.0インタフェースにおいて、RIPv2にて通知させます。
    また、直接接続ルート(connected route)をRIPv2で通知します。
    
    ip router rip
      redistribute connected
    
    interface GigaEthernet1.0
      ip address 192.168.0.254/24
      ip rip enable
      no shutdown
    

2.15.4.1.2. タイマーの設定

RIPv2で使用するタイマー値をコマンドにより変更することができます。

以下のタイマーの設定を行うことができます。

項目

説明

定期更新タイマー

RIPv2が有効となっているインタフェースより、
定期更新タイマー時間毎にRIPv2情報を隣接ルータに送信します。

無効タイマー

RIPv2のメトリック値を16に変更します。

ガーベジコレクションタイマー

ルーティングテーブルより経路を削除します。
ディスタンス値の大きなRIPv2以外のルートがあった場合には、
そのルートが有効となります。
  • RIPコンフィグモード

    項目

    説明

    timers

    タイマー設定

    リスト 2.15.8 設定例
    定期更新タイマーを20秒、無効タイマーを120秒、ガーベジコレクションタイマーを80秒とした場合
    
    ip router rip
      timers 20 120 80
    

注釈

  • RIPにおける、タイマーの値はRFCによって明確に規定されています。

  • この値をコンフィグで変更する場合においては、その変更による挙動、リスクを正しく把握・検査した上で行ってください。

2.15.4.1.3. 無効ルートの扱い

RIPv2により広告される経路がタイムアウトした場合、次のように扱います。

無効タイマーのタイムアウトにより、メトリックが16に設定されます。ディスタンスは変更されませんので経路情報にはそのまま残ります。 ガーベジコレクションタイマー(120秒)により、タイムアウトした経路は経路情報から削除されます。代わりの経路が存在する場合は、この時に経路情報に表示します。

リスト 2.15.9 表示例
最初の状態
  R       10.41.211.0/24 [120/2] via 172.16.222.254, GigaEthernet0.0,
  C       172.16.222.0/24 [0/1] is directly connected, GigaEthernet0.0,
(S       10.41.211.0/24 [150/2] via 172.16.222.1, GigaEthernet0.0,)
            →RIPv2の経路があるときは表示されません

10.41.211.0/24がタイムアウト
  R       10.41.211.0/24 [120/16] via 172.16.222.254, GigaEthernet0.0,
  C       172.16.222.0/24 [0/1] is directly connected, GigaEthernet0.0,

ガーベジコレクションタイマー(120秒)タイムアウト

 他の経路がない場合
  C       172.16.222.0/24 [0/1] is directly connected, GigaEthernet0.0,

 他の経路がある場合
  S       10.41.211.0/24 [150/2] via 172.16.222.1, GigaEthernet0.0,
  C       172.16.222.0/24 [0/1] is directly connected, GigaEthernet0.0,

2.15.4.2. 経路制御の設定

2.15.4.2.1. メトリックオフセット

ネットワーク内に、同一宛先への経路が複数存在する場合、RIPv2ではメトリック値(Hop数)を比較することにより、最適経路を確定します。IX-R/IX-Vでは、経路情報のメトリックを操作すること(メトリックオフセット値の加算)により、経路を意図的に操作することが可能です。

メトリックオフセット値は、次のコマンドで設定します。

  • インタフェースコンフィグモード

    項目

    説明

    ip rip metric-offset

    RIPv2受信メトリックオフセット値の設定

注釈

  • 受信メトリックオフセットは、応答メッセージの受信直後に、そのパケットに含まれる経路情報のメトリック値に加算します。

  • 受信メトリックオフセットのデフォルト値は1です。

  • 送信メトリックオフセットの設定はありません。

2.15.4.2.2. 経路フィルタ

UNIVERGE IX-R/IX-V シリーズでは、経路フィルタを設定することによりRIPv2の送受信を行う隣接ルータのフィルタリングもしくは、交換するRIPv2の経路のフィルタリングを行うことができます。

経路情報に関するフィルタは、次のコマンドで設定します。

  • インタフェースコンフィグモード

    項目

    説明

    ip rip distribute-list

    RIPv2経路情報フィルタの選択

  • RIPコンフィグモード

    項目

    説明

    distribute-list

    RIPv2経路情報フィルタの選択

注釈

  • 経路フィルタの経路条件指定にはプレフィックスリストが用いられます。

  • プレフィックスリストについては、プレフィックスリストの設定の節を参照してください。

リスト 2.15.10 設定例
RIPv2応答により受信した10.0.0.0/8への経路情報をフィルタリングします。

ip prefix-list rip-dlist-1 100 deny 10.0.0.0/8
ip prefix-list rip-dlist-1 1000 permit any

ip router rip
  distribute-list prefix rip-dlist-1 in

interface GigaEthernet0.0
  ip add 192.168.0.254/24
  ip rip enable
  no shutdown

注釈

  • 設定を有効にするためには、clear ip rip processが必要です。

  • プレフィックスリストで deny設定した経路がフィルタリングされます。

  • permit設定の1つもないプレフィックスリストを適用すると、すべての経路がフィルタリングされます。

2.15.4.2.3. デフォルトルート広告

RIPv2を使用する場合において、広告するルート情報にデフォルトルートを含めることができます。

  • インタフェースコンフィグモード

    項目

    説明

    ip rip originate-default

    デフォルトルート広告設定

    ip rip send-default

    デフォルトルート送信設定

    ip rip receive-default

    デフォルトルート受信設定

  • RIPコンフィグモード

    項目

    説明

    originate-default

    デフォルトルート広告設定

    リスト 2.15.11 設定例
    RIPv2にて自分のインタフェースアドレスをデフォルトルートとして広告します。
    
    ip router rip
      originate-default
    

注釈

  • デフォルトルート広告の設定を行った場合、設定を行ったルータ自身のデフォルトルートの有無にかかわらず、常にデフォルトルートを広告します。

  • デフォルトルート送信拒否(no ip rip send-default)を行っている場合には、デフォルトルート広告設定は無効となります。

2.15.4.2.4. 経路再配信

IX-R/IX-Vでは、RIPv2利用時においてRIP以外のルーティング情報を再配信することができます。
再配信時のメトリックはデフォルトでは再配信元のメトリックを使用します。
元のメトリックが16を超える場合は、メトリック16の無効経路として再配信されますので、メトリックの設定を行ってください。
  • RIPコンフィグモード

    項目

    説明

    redistribute

    RIPv2以外の経路情報をRIPv2で再配信

    リスト 2.15.12 設定例
    GigaEthernet0.0インタフェースにおいて、RIPv2を送受信とも動作させ、かつそのインタフェース以外のサブネットワークを通知させます。
    
    ip router rip
      redistribute connected
    
    interface GigaEthernet0.0
      ip address 192.168.0.254/24
      ip rip enable
      no shutdown
    

注釈

  • redistributeは経路制御の設定(ルートマップ設定、プレフィックスリストの設定等)の後に行ってください。

  • redistribute設定後に経路制御の設定の変更を行った場合、clear ip ospf processが必要です。

OSPFの経路を再配信する際の注意事項

RIPv2とOSPFを同一のインタフェースで動作させているような場合、OSPFのType2の外部経路のネクストホップのネットワークアドレスがRIPv2送信インタフェースのネットワークアドレスと同じくなる経路は、split-typeをnoneにしていなければ、RIPの経路として広告されません。Type1の外部経路、エリア内、エリア間経路については、ネクストホップに関係なくRIPの経路として広告されます。

2.15.4.2.5. 経路再配信(ルートマップ設定)

経路再配信オプションに、ルートマップオプションを利用することにより、再配信経路をさらに詳細に制御することが可能となります。経路再配信で利用するルートマップのマッチ条件とセット条件には以下があります。
ルートマップの詳細は、ルートマップの項を参照してください。
  • グローバルコンフィグモード

    項目

    説明

    route-map

    ルートマップ設定

  • ルートマップコンフィグモード

    項目

    説明

    match interface

    出先インタフェースを条件とします。

    match ip address prefix-list

    IPv4宛先アドレスを条件とします。

    match ip next-hop prefix-list

    ネクストホップを条件とします。

    match metric

    メトリック値(MED)を条件とします。

    match tag

    タグ値を条件とします。

    set ip next-hop

    IPv4ネクストホップを設定します。

    set metric

    メトリック値(MED)を設定します。

    set tag

    タグ値を設定します。

注釈

  • ルートマップに経路再配信と無関係なオプションが設定されていた場合、その設定は無視されます。

  • 経路再配信設定で、指定したルートマップが作成されていなかった場合、すべて条件にマッチしなかったとして処理されます。

  • ルートマップに条件が1つも設定されていなかった場合、条件にマッチしたとして処理されます。

  • RIPv2においてタグ値の16ビットより大きいビットは切り捨てて再配信されます。

  • ネクストホップアドレスに無効なアドレスが設定されていた場合、ネクストホップアドレスの書き換えは行われません。

2.15.5. OSPFv2

OSPF(Open Shortest Path First) は、RIP と同様にAS(Autonomous System)内部で動作するIGP(Interior Gateway Protocol) の1 つです。OSPF は、リンクステートと呼ばれるネットワークに関する情報を運ぶパケットをルータ間で交換し、この情報をもとに最短経路アルゴリズム(Dijkstra algorithm)を実行し、経路情報をルーティングテーブルに反映させます。
OSPFにはIPv4で用いられるOSPFv2とIPv6で用いられるOSPFv3がありますが、IX-R/IX-VではOSPFv2のみサポートしています。

利用可能なOSPF のルータタイプ

  • Internal ルータ

    • ルータが直接接続しているネットワークがすべて同じエリアに属しているルータ

  • Area Border ルータ(ABR)

    • AS 内の複数エリアに接続しているルータ

  • Autonomous System Boundary ルータ(ASBR)

    • 他の自律システム(AS)に接続しているルータ

    • 他OSPF とのASBR にはなれません。

  • バックボーンルータ

    • バックボーンエリアへのインタフェースを持つルータ

利用可能なOSPF のネットワークリンク

  • トランジットネットワーク

  • スタブネットワーク

  • ポイントツーポイントネットワーク

注釈

  • NBMA(Non-Broadcast Multi-Access)ネットワークは未サポートです。

  • 仮想リンクネットワークは未サポートです。

2.15.5.1. 基本設定

2.15.5.1.1. OSPFの起動/再起動

OSPFを動作させるためにはOSPFプロセスを有効にする必要があります。
OSPFプロセス有効化には以下のコマンドを使用します。
  • グローバルコンフィグモード

    項目

    説明

    ip router ospf

    OSPFv2動作開始/OSPFv2コンフィグモード移行

    clear ip ospf process

    OSPFv2 プロセス再起動

    リスト 2.15.13 設定例:基本的なOSPFの設定
    ip router ospf 100
      area 0
      network GigaEthernet0.0 area 0
    !
    interface GigaEthernet0.0
      ip address 192.168.1.254/24
      no shutdown
    

注釈

  • OSPFプロセス番号は、装置間で一致させる必要はありません。

  • IX-R/IX-Vで同時に動作可能なOSPFプロセスは装置に対して1 つです。

2.15.5.1.2. ルータID

OSPF では、ルータを一意に認識できるようにルータID をもちます。ルータID を設定するには以下のコマンドを使用します。

ルータID はインタフェースに割り当てられているIP アドレスのうちのいずれかになります。
ルータID を任意に設定することも可能です。
  • OSPFv2コンフィグモード

    項目

    説明

    router-id

    ルータIDの設定

注釈

  • 設定後の値を有効にするためには、OSPFプロセスの再起動 (clear ip ospf process) を実行する必要があります。

  • プロセス再起動せずに装置を再起動させた場合は、ルータID変更通知を周囲のルータに広告されないため、一時的にネットワークが不安定となる可能性があります。

2.15.5.1.3. 経路計算タイマーの設定

OSPF では、ルータの負荷を軽減するためトポロジ変化時にすぐに経路計算を行わず、タイマーを設定することで、複数のトポロジ変化をまとめて経路計算を行います。
以下のタイマーに関して変更が可能です。
  • delay(デフォルト5秒)

    • トポロジ変化を検出(LSA を受信)してから経路計算を行うまでの時間。

  • hold(デフォルト10秒)

    • 一度経路計算を行ってから次の計算を行うまでの時間

トポロジ変化(LSA 受信)と経路計算のタイミングは以下のようになります。
デフォルトでは、トポロジ変化後5秒後に計算を行います。また、1 度経路計算を行っている場合には10秒間経路計算は行いません。
../_images/15_routing15.svg

図 2.15.1 経路計算タイマーの動作

  • OSPFv2コンフィグモード

    項目

    説明

    timers

    経路計算タイマーの設定

    リスト 2.15.14 設定例
    delay タイマーを10 秒,hold タイマーを15 秒に設定。
    
    ip router ospf 100
      timers delay 10 hold 15
      area 0
      network GigaEthernet0.0 area 0
    
エリア間経路(タイプ3 LSA)、OSPF 外部経路(タイプ5 LSA)、NSSA 外部経路(タイプ7LSA)の更新時はタイマーを設定せずに経路計算を行います。
ただし、タイマー設定中に更新された場合は、タイマー満了後に経路計算を行います。

2.15.5.2. エリアの設定

以下のエリアをサポートしています。

  • エリア

    • 通常のエリアです。エリア内にAS 境界ルータ(ASBR)を置くことができ、OSPF 外部経路を広告できます。

    • 他のエリアからのOSPF 外部経路(タイプ5 LSA)も広告されます。

    • エリア境界ルータを複数置くことができます。

    • エリアIDが 0 もしくは 0.0.0.0 のエリアはバックボーンエリアと呼ばれ、バックボーン以外のすべてのエリアはバックボーンエリアとエリア境界ルータ(ABR)で接続される必要があります。(エリアは後続の章で解説します)

    ../_images/15_routing16.svg

    図 2.15.2 エリアについて

  • スタブエリア(Stub Area)

    • エリア内のエリア境界ルータ(ABR)が1 台のみの場合に設定できます。

    • スタブエリア内にはABR 宛のデフォルトルートが広告されます。

    • ABR が1 台のみのため、スタブエリア内の他のルータはABR 宛のデフォルトルートを受信することにより、OSPF エリア間、OSPF 外部との通信が可能となります。このため、エリア間経路、OSPF 外部経路はエリア内に広告する必要がなくなりますので、エリア内で扱う経路数を減らすことができ、エリア内のルータの負荷を軽減することができます。

    • スタブエリア内では、OSPF 外部経路は扱えません。このため、エリア内では他のプロトコルからの再配信を行うことができません。

    ../_images/15_routing17.svg

    図 2.15.3 スタブエリアについて

  • NSSA(Not So Stubby Area)

    • スタブエリアと同様に、ABR 宛のデフォルトルートを広告することによりOSPF エリア間、OSPF 外部との通信が可能となるため、エリア内にエリア間経路、OSPF 外部経路を広告する必要がありません。このため、エリア内で扱う経路数を減らすことができ、エリア内のルータの負荷を軽減することができます。

    • スタブエリアではエリア内に他のプロトコルからの経路の再配信を行うことができませんが、NSSA内では、NSSA 外部経路(タイプ7 LSA)として広告することができます。

    • NSSA内では、NSSA 外部経路はOSPF 外部経路と同様に扱われます。また、NSSA 外部経路は、ABR においてOSPF 外部経路(タイプ5 LSA)へ変換されバックボーンエリアに広告されます。

    ../_images/15_routing18.svg

    図 2.15.4 NSSAについて

2.15.5.2.1. エリアの設定

OSPF では、AS 内のネットワークをバックボーンエリア(Area0 もしくはArea0.0.0.0 で表される)とそれに接続されるエリアの2 階層の構成で運用されます。どのエリアも必ずバックボーンエリアに接続されている必要があり、各エリア間の通信はバックボーンエリアを通して行われます。それぞれのエリアは、32 ビットのエリアID で区別され、以下のコマンドにて設定します。
  • OSPFv2コンフィグモード

    項目

    説明

    area {AREA-ID}

    エリアの登録

2.15.5.2.2. エリアレンジの設定

エリア境界ルータにてエリア内のサブネットアドレスを指定の範囲で集約し、他のエリアに広告します。他のエリアに対して内部の細かい情報を隠蔽することで、データベースの大きさを小さくすることができます。また、登録したレンジを広告しない設定もできます。
  • OSPFv2コンフィグモード

    項目

    説明

    area {AREA-ID} range

    エリアレンジの設定

    リスト 2.15.15 設定例
    area1 の経路を10.0.0.0/16 に集約してarea0 へ広告
    
    ip router ospf 100
      area 0
      area 1
      area 1 range 10.0.0.0/16 advertise
      network GigaEthernet0.0 area 0
      network GigaEthernet1.0 area 1
    

2.15.5.2.3. スタブエリアの設定

スタブエリアでは、ABR からデフォルトルートがエリア間経路として広告されます。他エリアのエリア間経路はエリア内に広告するか、しないかを選択できます。
設定コマンドは次のとおりです。
  • OSPFv2コンフィグモード

    項目

    説明

    area {AREA-ID} stub

    スタブエリアの設定

    area {AREA-ID} default-cost

    スタブエリアのデフォルトコスト設定

    リスト 2.15.16 設定例
    area1 をスタブエリアに設定。
    area1 にエリア間経路を広告しない。
    
    ip router ospf 100
      area 0
      area 1
      area 1 stub no-summary
      network GigaEthernet0.0 area 0
      network GigaEthernet1.0 area 1
    

2.15.5.2.4. NSSAの設定

NSSA では、ABR からデフォルトルートがNSSA 外部経路として広告されます。スタブエリアと同様に、他エリアのエリア間経路はエリア内に広告するか、しないかを選択できます。
設定コマンドは次のとおりです。
  • OSPFv2コンフィグモード

    項目

    説明

    area {AREA-ID} nssa

    NSSAの設定

    リスト 2.15.17 設定例1
    area2 をNSSA に設定。
    area2 にエリア間経路を広告しない。
    
    ip router ospf 100
      area 0
      area 2
      area 2 nssa no-summary
      network GigaEthernet0.0 area 0
      network GigaEthernet1.0 area 2
    
    リスト 2.15.18 設定例2
    area2 をNSSA に設定。
    area2 に広告するデフォルトルートのコストを5,ルートタイプ1 に設定。
    
    ip router ospf 100
      area 0
      area 2
      area 2 nssa default-metric 5 default-metric-type 1
      network GigaEthernet0.0 area 0
      network GigaEthernet1.0 area 2
    

2.15.5.3. NSSA トランスレータ設定(タイプ7/5 LSA変換)

NSSA ではABR において、NSSA 外部経路をOSPF 外部経路へ変換して、バックボーンへ広告します。この変換を行うルータをトランスレータと言います。
トランスレータの設定を行っているルータはすべてこの変換を行います。
トランスレータの設定を行っているルータが存在せず、NSSA 内で複数のABR が存在する場合、1 台のみトランスレータとして選択されます。
トランスレータは、ルータID が大きいルータが選択され、トランスレータに設定されたルータ、または、ルータID が大きいルータが現れると、一定時間(スタビリティインターバル)経過後、変換処理を停止します。
リスト 2.15.19 設定例1
トランスレータとして動作するように設定。

ip router ospf 10
  area 0
  area 2
  area 2 nssa translate
  network GigaEthernet0.0 area 0
  network GigaEthernet1.0 area 2
リスト 2.15.20 設定例2
スタビリティインターバルを 60 秒に設定

ip router ospf 10
  area 0
  area 2
  area 2 nssa translate stability-interval 60
  network GigaEthernet0.0 area 0
  network GigaEthernet1.0 area 2

2.15.5.4. NSSA レンジの設定

NSSA の ABR において、NSSA 内で生成した NSSA 外部経路をバックボーンに OSPF 外部経路として広告する際に、経路を集約して広告することができます。
設定コマンドは以下のとおりです。
  • OSPFv2コンフィグモード

    項目

    説明

    nssa-range

    NSSA のレンジ設定

    リスト 2.15.21 設定例1
    area2 の NSSA 外部経路を 192.168.0.0/16 に集約して area0 へ広告。
    
    ip router ospf 10
      area 0
      area 2
      area 2 nssa no-summary
      network GigaEthernet0.0 area 0
      network GigaEthernet1.0 area 2
      nssa-range 192.168.0.0/16
    

2.15.5.5. インタフェースの設定

2.15.5.5.1. OSPFインタフェースの設定

OSPF を動作させるためには、OSPF が動作するインタフェースの設定を行う必要があります。
パラメータには、インタフェース名,IP アドレスどちらでも指定可能です。IP アドレスを指定した場合は、該当するインタフェースにおいて OSPF が動作します。
  • OSPFv2コンフィグモード

    項目

    説明

    network

    OSPF インタフェースの設定

    リスト 2.15.22 設定例
    GigaEthernet0.0 で OSPF を動作
    
    ip router ospf 100
      area 0
      network GigaEthernet0.0 area 0
    

2.15.5.5.2. コストの設定

OSPF では、コストを設定することによってトラフィックの経路の優先度を決めることができます。またコストを設定していない場合、そのインタフェースのコストは以下のようになります。
計算結果が 1 より小さい場合は、1 となります(GigaEthernet インタフェースの場合等)。
  • 通常のインタフェース :100M / インタフェースのスピード(bps)

  • トンネルインタフェース :(100M / インタフェースのスピード(bps))×10

  • インタフェースコンフィグモード

    項目

    説明

    ip ospf cost

    OSPFv2 コストの設定

2.15.5.5.3. DRプライオリティの設定

OSPF では、エリア内ルータで同じデータベースを維持する為にリンクステートの交換を行いますが、すべてのルータ同士でリンクステートを交換するわけではありません。
そこで、同一ネットワーク内の OSPF ルータから 1 つの指名ルータ DR(Designated Router)、バックアップ指名ルータ BDR(Backup Designated Router)を選出し、DR が他の全 OSPF ルータとリンクステートの交換を行います。
また、送信元ルータの DR、BDR へのなりやすさを以下のコマンドにて設定することができます。優先度を 0 にすることで、DR にも BDR にも絶対にならないようにすることもできます。
  • OSPFv2コンフィグモード

    項目

    説明

    ip ospf priority

    OSPFv2 ルータ優先度の設定

2.15.5.5.4. パッシブインタフェース

OSPF で経路を広告したくないインタフェースがあるが、そのインタフェースが属するネットワークの経路情報を他のインタフェースで使用している OSPF に広告する必要がある場合に設定します。
OSPF ルーティング領域の端にあるルータにおいて設定されます。
../_images/15_routing19.svg

図 2.15.5 パッシブインタフェースについて

  • OSPFv2コンフィグモード

    項目

    説明

    passive-interface

    パッシブインタフェースの設定

    リスト 2.15.23 設定例
    ip router ospf 100
      passive-interface GigaEthernet1.0
      area 0
      network GigaEthernet0.0 area 0
      network GigaEthernet1.0 area 0
    

2.15.5.5.5. タイマーの設定

以下のタイマーの変更が可能です。

  • hello interval(デフォルト10秒)

    • Hello パケットを送信する間隔

  • dead interval(デフォルト 40 秒)

    • 隣接ルータダウンを認識する時間

  • retransmit interval(デフォルト 5 秒)

    • 隣接ルータへのパケット再送間隔

  • transmit-delay(デフォルト 1 秒)

    • LSA 受信から他のルータへ広告するまでの時間

設定コマンドは以下のとおりです。

  • インタフェースコンフィグモード

    項目

    説明

    ip ospf hello-interval

    hello-interval の設定

    ip ospf dead-interval

    dead-interval の設定

    ip ospf retransmit-interval

    retransmit-interval の設定

    ip ospf transmit-delay

    transmit-delay の設定

2.15.5.5.6. MTU不一致無視設定

OSPF では、隣接関係を確立する際にお互いの MTU を交換し、異なる場合は隣接関係の確立を行いません(隣接状態が ExStart より先に進みません)。
IPsec トンネル使用時等、運用中に MTU が変更になる場合や、実装により MTU が合わない場合など、MTU 不一致により、隣接関係を確立することができない場合があります。
以下の設定により、MTU が不一致でも隣接関係を確立することができます。ただし、MTU のチェックは対向するそれぞれのルータで行いますので、隣接のルータでも同様の機能が必要です
  • インタフェースコンフィグモード

    項目

    説明

    ip ospf mtu-ignore

    MTU 不一致無視の設定

2.15.5.5.7. ネットワーク種別設定

ネットワーク種別は、デフォルトではインタフェース種別に応じた値が設定されますが、コマンドにより設定変更が可能です。設定コマンドは以下のとおりです。

  • インタフェースコンフィグモード

    項目

    説明

    ip ospf network

    ネットワーク種別設定

2.15.5.5.8. OSPF認証

OSPF では、ルータ間で OSPF パケットの認証を行うことができます。たとえば装置の交換や、ネットワークの接続ミスなどにより、不用意な OSPF パケットが流入してきて動作を不安定にさせない効果が期待できます。
OSPFv2 の認証には、単純パスワード(Simple Password)、暗号化パスワード(MD5)の 2 つがあり、以下のコマンドにて設定することができます。
  • インタフェースコンフィグモード

    項目

    説明

    ip ospf authentication

    認証の設定

    ip ospf authentication-key

    単純パスワードの設定

    ip ospf message-digest-key

    暗号化パスワードの設定

2.15.5.6. 経路制御の設定

2.15.5.6.1. デフォルトルート広告

OSPF を使用する場合において、広告するルート情報にデフォルトルートを含めることができます。
以下の設定を行うことで、外部経路としてデフォルトルートを広告します。
  • OSPFv2コンフィグモード

    項目

    説明

    originate-default

    OSPF でデフォルトルートを広告する

    リスト 2.15.24 設定例
    常にデフォルトルートを広告
    
    ip router ospf 100
      originate-default always
      area 0
      network GigaEthernet0.0 area 0
    
デフォルトルート広告の設定を”always”に設定した場合は、設定を行ったルータ自身のデフォルトルートの有無にかかわらず、常にデフォルトルートを広告します。
”always”を指定しない場合は、自ルータがデフォルトルートを持っている場合のみ、デフォルトルートを広告します。
また、デフォルトルート広告の設定を行わない場合でも、デフォルトルートを持っているプロトコルの再配信を行うことでも、デフォルトルートは広告されます。

2.15.5.6.2. 経路再配信

OSPF 利用時において OSPF 以外のルーティング情報を再配信することができます。
NSSA 内では NSSA 外部経路、その他のエリアでは OSPF 外部経路として広告されます。スタブエリアでは再配信は行うことができません。再配信時のコストは以下の優先度で設定されます。
  • route-map で設定したコスト

  • redistribute のパラメータで設定したコスト

  • default-metric で設定したコスト

  • 何も設定しない場合:IPv4の場合 1

  • OSPFv2コンフィグモード

    項目

    説明

    redistribute

    OSPF 以外のルーティング情報を OSPF で再配信

    default-metric

    経路再配信時のメトリック設定

    リスト 2.15.25 設定例
    GigaEthernet0.0 インタフェースにおいて OSPF を動作させ、RIP で学習した経路をOSPF 経路に通知
    
    ip router ospf 100
      redistribute rip metric 10
      area 0
      network GigaEthernet0.0 area 0
    

注釈

  • redistribute はルートマップ設定、プレフィックスリスト設定の後に行ってください。

  • redistribute設定後にルートマップ設定、プレフィックスリスト設定の変更を行った場合、プロセスの再起動(clear ip ospf process)が必要です。

2.15.5.6.3. 経路再配信(ルートマップ設定)

経路再配信オプションに、ルートマップオプションを利用することにより、再配信経路をさらに詳細に制御することが可能となります。
経路再配信で利用するルートマップのマッチ条件とセット条件には以下があります。ルートマップの詳細は、ルートマップの項を参照してください。
  • グローバルコンフィグモード

    項目

    説明

    route-map

    ルートマップ設定

  • ルートマップコンフィグモード

    項目

    説明

    match interface

    出先インタフェースを条件とします。

    match ip address prefix-list

    IPv4宛先アドレスを条件とします。

    match ip next-hop prefix-list

    ネクストホップを条件とします。

    match metric

    メトリック値(MED)を条件とします。

    match tag

    タグ値を条件とします。

    set metric-type

    OSPF メトリックタイプを指定して再配信します。

    set ip next-hop

    IPv4ネクストホップを設定します。

    set metric

    メトリック値(MED)を設定します。

    set tag

    タグ値を設定します。

2.15.5.6.4. 経路フィルタ(IPv4 のみ)

ルータの経路情報(FIB: Forwarding Information Base)へ OSPF の経路を登録する際に、経路をフィルタすることができます。対象は OSPF のすべての経路になります。
ネットワークのみ指定する場合は、プレフィックスリストを使用し、その他の条件を設定する場合はルートマップを使用します。ルートマップでは、セット条件は適用されません。
FIB への書き込み時にフィルタするのみで、データベース送信の際にはフィルタは適用されないため、他のルータの経路情報には影響を与えません。
そのため、設定の際はルーティングループが発生しないよう注意してください。
  • OSPFv2コンフィグモード

    項目

    説明

    distribute-list

    経路情報のフィルタ

    リスト 2.15.26 設定例
    172.16.0.0/24 の経路をフィルタします。
    
    ip prefix-list route-filter 10 deny 172.16.0.0/24
    ip prefix-list route-filter 20 permit any
    
    ip router ospf 10
      distribute-list prefix route-filter
      area 0
      network GigaEthernet0.0 area 0
    

また、ルートマップで使用可能なマッチ条件は以下のとおりです。

  • グローバルコンフィグモード

    項目

    説明

    route-map

    ルートマップ設定

  • ルートマップコンフィグモード

    項目

    説明

    match interface

    出先インタフェースを条件とします。

    match ip address prefix-list

    IPv4宛先アドレスを条件とします。

    match ip next-hop prefix-list

    ネクストホップを条件とします。

    match metric

    メトリック値(MED)を条件とします。

    match tag

    タグ値を条件とします。

注釈

  • OSPF への再配信を行っている場合、経路フィルタ適用前の経路が再配信されます。

  • フィルタ適用により、OSPF の経路がフィルタされ他のプロトコルの経路が有効になっている場合、該当経路は再配信されませんので、該当経路のプロトコルの distance を OSPF より高くなるように設定してください。

2.15.5.6.5. OSPF最大エントリ数の設定

OSPFv2 で使用するアドレスエントリ数を設定することができます。
IX-R/IX-VのOSPFで使用するすべてのアドレス総数の上限は以下になります。

IX-R

IX-V

rib max-entries設定有

rib max-entriesの設定値

rib max-entriesの設定値

rib max-entries設定無

デフォルト値(2048)

デフォルト値(20000)

  • OSPFv2コンフィグモード

    項目

    説明

    rib max-entries

    最大エントリ数を設定します。

注釈

  • この設定で扱うエントリ数とは、扱える経路数ではなく、OSPFv2 で使用するすべてのアドレスの総数となります。

2.15.5.6.6. イコールコストマルチパス

OSPF では、同じコストの経路が複数ある場合、データトラフィックを各経路に分散して送信します。
この他に、分散しない方法や(Best-Path)、パケットの始点終点アドレスおよびプロトコルのセット(フロー)ごとに分散させる方法(Per-flow)を選択することもできます。詳細はマルチパスの項を参照してください。
  • AS 外部ルートのマルチパス

    AS 外部ルートのマルチパスは、次の2つがあります。

    • 1 つの ASBR からルートを広告

      AS 外部ルートを広告している ASBR に対する同一コストの経路が複数存在する場合、マルチパスとなります。

    • 複数の ASBR から同一ルートを広告

      外部ルートタイプ 1 の場合は、ASBR までのコストと広告されるコストの合計が等しい経路が存在する場合、
      外部ルートタイプ 2 の場合は、ASBR までのコストが等しくかつ広告されるコストが等しいルートが存在する場合マルチパスとなります。
  • ポイントツーポイントインタフェースのマルチパス

    トンネルインタフェースなどのポイントツーポイントインタフェースではマルチパスは対応していません。
    ポイントツーポイントインタフェースにおいてマルチパスを使用する場合は、アドレスを設定し、ネットワーク種別設定コマンド(ip ospf network)にてインタフェース種別をbroadcast に設定してください。

2.15.5.7. OSPF状態の表示

OSPF のインタフェース、接続ルータ、エリア、LSA データベース、ルーティングテーブル、および統計等の情報をコマンドで確認することができます。

  • 表示コマンド

    項目

    説明

    show ip ospf area

    OSPF エリアおよび各エリア内のノード数の一覧、または詳細情報の表示

    show ip ospf database

    LSA データベースの一覧、または詳細情報の表示

    show ip ospf interface

    OSPF が動作しているインタフェース状態の一覧、または詳細情報の表示

    show ip ospf neighbor

    接続している OSPF ルータ状態の一覧、または詳細の表示

    show ip ospf rib

    OSPF 内部のルーティングテーブル情報(RIB 情報)の表示

    show ip ospf statistics

    OSPF 統計情報の表示

注釈

  • OSPF 内部ルーティングテーブルはパケットのルーティングで使用されるルーティングテーブルとは異なります。

  • OSPF 経路計算により OSPF 内部ルーティングテーブルの情報が生成され、そこから経路をルータの経路情報(FIB: Forwarding Information Base)へ反映されます。

2.15.6. BGP4

BGP(Border Gateway Protocol)はAS(Autonomous System)間で動作するEGP(Exterior Gateway Protocol)のひとつで、AS間の経路交換を行うためのルーティングプロトコルです。

BGP4ではTCP(ポート:179)を使用し、1対1のBGPセッションを確立し、経路情報の交換を行います。

BGP4では以下のメッセージを使用します。

  • OPENメッセージ

    BGPセッションの確立のために使用します。

  • UPDATEメッセージ

    経路情報の広告に使用します。セッション確立時はすべての経路情報を送信しますが、通常は経路情報の変更があった場合のみ広告を行います。

  • KEEPALIVEメッセージ

    ピアの到達確認のためにピアの間で定期的に交換を行います。KEEPALIVEメッセージまたは、UPDATEメッセージが一定時間到達しない場合ピアへの到達確認が無くなったと判断し、セッションを切断します。

  • NOTIFICATIONメッセージ

    エラー検出をピアに通知するために使用します。

2.15.6.1. 注意事項

  • ピアへのルートエントリ数の増加により、BGP処理の負荷が増加します。

  • ピア数やルートエントリ数など、諸元値を満たせない場合もあるため、事前の動作確認をお願いいたします。

2.15.6.2. ピアの設定

BGP4を動作させるためには、router bgpコマンドによりBGPコンフィグモードへ移行して設定を行います。また、アドレスファミリに対する設定を行う場合には、address-familyコマンドによりBGPアドレスファミリモードへ移行します。

設定は以下のコマンドを使用します。

  • グローバルコンフィグモード

    項目

    説明

    router bgp

    BGPの動作開始

  • BGPコンフィグモード

    項目

    説明

    address-family

    アドレスファミリの設定

    neighbor remote-as

    ピアの設定

    neighbor description

    ピア情報の記述

    neighbor shutdown

    ピアの停止

  • 表示コマンド

    項目

    説明

    show ip bgp

    パス情報の表示

    show ip bgp neighbors

    ピア情報の表示

    show ip bgp summary

    ピア情報の表示

  • クリアコマンド

    項目

    説明

    clear ip bgp

    ピアのリセット

BGPのピアの種類には以下の2種類があります。

  • eBGP(外部ピア)

    異なるAS間での接続をeBGP(external-BGP)と呼びます。 eBGPでは、ピアは直接接続しているネットワークに接続している必要があります。 直接接続していないネットワーク間でeBGPピアを確立する場合は、マルチホップの設定が必要となります。

  • iBGP(内部ピア)

    同一AS内での接続をiBGP(internal-BGP)と呼びます。

iBGPでは、ピアは直接接続している必要はありませんが、スタティックルートなどのIGPを使用し、ピアへ到達できる必要があります。iBGPで学習した経路は、他のiBGPルータへは広告を行いません。このため、同一AS内に複数のiBGPルータが存在する場合、それらのルータはフルメッシュでピアを確立する必要があります。フルメッシュでピアを確立していない場合は、他のルータの経路が広告されないなどの問題が発生します。

設定の際はeBGP, iBGPの指定はありません。ピア指定時に自ASと異なるASを指定した場合はeBGP、同じASを設定した場合はiBGPとして動作します。

../_images/15_routing1.svg

図 2.15.6 ピアの設定とeBGP/iBGPの関係

リスト 2.15.27 設定例:ピアの設定
router bgp 100
  neighbor 10.2.0.3 remote-as 100
  neighbor 10.2.0.3 description Router-A
  neighbor 10.1.0.2 remote-as 200
  neighbor 10.1.0.2 description Router-B
  address-family ipv4 unicast
    redistribute connected

2.15.6.2.1. ルータID

BGPでは、ルータを一意に識別できるようにルータIDを持ちます。ルータIDはインタフェースに割り当てられているIPアドレスのうちのいずれかになります。ルータIDの選択の方法については、付録のルータIDセレクションの節を参照してください。ルータIDを任意の値に設定するには、以下のコマンドを使用します。

  • BGPコンフィグモード

    項目

    説明

    router-id

    ルータIDの設定

2.15.6.2.2. マルチホップの設定

マルチホップ設定を行うことで、直接接続していないネットワーク間でeBGPピアを確立することができます。通常は、直接接続したネットワークに接続するルータとピアを確立しますが、間に非BGPルータが存在する場合などには、直接接続していないルータ間でeBGPピアを確立する必要があります。このような場合は、マルチホップの設定を行います。N個先のルータとeBGPピアを確立する場合は、ebgp-multihopのパラメータをN以上に設定します。

  • BGPコンフィグモード

    項目

    説明

    neighbor ebgp-multihop

    マルチホップの設定

  • 表示コマンド

    項目

    説明

    show ip bgp neighbors

    ピア情報の表示

../_images/15_routing2.svg

図 2.15.7 マルチホップのピアの構成

リスト 2.15.28 設定例:マルチホップのピアの設定
router bgp 100
  neighbor 10.2.0.2 remote-as 200
  neighbor 10.2.0.2 ebgp-multihop 2
  address-family ipv4
    redistribute connected

2.15.6.2.3. ソースアドレスの設定

ピアとの通信に使用するソースアドレスは、TCPパケットを送信するインタフェースを使用します。そのため、運用中にソースアドレスが変更になる場合があります。

ソースアドレスを固定にするために、ソースアドレスとして使用するインタフェースを指定することができます。指定したインタフェースがダウンしている場合は、TCPのセッションを確立することはできません。

  • BGPコンフィグモード

    項目

    説明

    neighbor update-source

    指定ピアに対するソースアドレス指定

    リスト 2.15.29 設定例:ソースアドレス指定の設定
    ソースアドレスとして、GigaEthernet0.0のアドレスを使用
    
    router bgp 100
      neighbor 10.2.0.2 remote-as 200
      neighbor 10.2.0.2 update-source GigaEthernet0.0
      neighbor 10.2.0.2 ebgp-multihop 2
      address-family ipv4
        redistribute connected
    

2.15.6.2.4. ルートリフレクタの設定

iBGPルータ間はフルメッシュで接続する必要があります。そのため、ルータ数が増えるとルータの負荷が高くなります。これを解決するためにルートリフレクタを使用します。

ルートリフレクタを設定することにより、iBGPピアから学習した経路を別のiBGPへ広告できるようになります。これにより、各BGPルータはルートリフレクタを設定したBGPルータ以外とはピアを確立する必要は無くなります。

../_images/15_routing3.svg

図 2.15.8 ルートリフレクタの構成

  • BGPコンフィグモード

    項目

    説明

    neighbor route-reflector-client

    ルートリフレクタクライアントの設定

    cluster-id

    クラスタIDの設定

    リスト 2.15.30 設定例:ルートリフレクタの設定
    10.1.0.2, 10.2.0.3のルータをルートリフレクタのクライアントとして設定
    クラスタIDに1000を設定
    
    router bgp 100
      cluster-id 1000
      neighbor 10.1.0.2 remote-as 100
      neighbor 10.1.0.2 route-reflector-client
      neighbor 10.2.0.3 remote-as 100
      neighbor 10.2.0.3 route-reflector-client
    

2.15.6.2.5. タイマーの設定

BGPで使用するタイマー値をコマンドにより変更することができます。

以下のタイマーの設定を行うことができます。

  • キープアライブタイム:キープアライブの送信間隔

  • ホールドタイム:ピアが切断したと認識する時間

  • 最小広告間隔:学習した経路をピアに広告する最小間隔

  • TCP再接続間隔:BGPセッション切断の状態から再度TCPの接続を開始するまでの間隔

設定を有効にするにはピアのリセットが必要です。

キープアライブタイムを"0"に設定すると、キープアライブメッセージを送信しません。また、キープアライブタイムをホールドタイム以上に設定することはできません。

ホールドタイムは相手ピアとのネゴシエーションの結果、小さい方が採用されます。自ルータで設定したキープアライブタイムがネゴシエーションの結果決定したホールドタイム以上の場合は、キープアライブタイムがネゴシエーションの結果決定したホールドタイムの3分の1に設定されます。

タイマー値はピア毎に設定ができます。ピア毎の設定がない場合は、全ピアに対するタイマー値を使用します。

  • BGPコンフィグモード

    項目

    説明

    timers

    全ピアに対するタイマーの設定

    neighbor timers

    指定ピアに対するタイマーの設定

    neighbor advertisement-interval

    指定ピアに対する最小広告間隔

    neighbor connect-interval

    指定ピアに対するTCP再接続間隔

  • 表示コマンド

    項目

    説明

    show ip bgp neighbors

    ピア情報の表示

    リスト 2.15.31 設定例:タイマーの設定
    全ピアのキープアライブタイムを50秒、ホールドタイムを200秒に設定
    10.1.1.2のピアのキープアライブタイムを70秒、ホールドタイムを280秒に設定
    最小広告間隔を10秒に設定
    
    router bgp 100
      timers 50 200
      neighbor 10.1.1.2 remote-as 200
      neighbor 10.1.1.2 timers 70 280
      neighbor 10.1.1.2 advertisement-interval 10
      address-family ipv4
        redistribute connected
    

2.15.6.2.6. ケイパビリティの設定

BGP4では、セッションを確立する際にサポートしているケイパビリティのネゴシエーションを行い、サポートしているケイパビリティに対応する機能のみを使用します。

ケイパビリティはOPENメッセージに設定されます。これにより、接続開始時にピアルータのケイパビリティを知ることができます。

UNIVERGE IX-R/IX-V シリーズではIPv4 unicast, route-refreshケイパビリティが送信されます。

  • IPv4 unicast:IPv4ユニキャスト広告

  • route-refresh:ルートの再広告要求

2.15.6.3. 経路の制御

2.15.6.3.1. デフォルトルート広告

広告する経路情報にデフォルトルートを含めることができます。

デフォルトルート広告の設定を”always”に設定した場合は、設定を行ったルータ自身のデフォルトルートの有無にかかわらず、常にデフォルトルートを広告します。”always”を設定しない場合は、自ルータがデフォルトルートを持っている場合のみ、デフォルトルートを広告します。また、デフォルトルート広告の設定を行わない場合でも、デフォルトルートを持っているプロトコルの再配信を行うことにより、デフォルトルートを広告することができます。

ピアへデフォルトルートの広告を行わない場合は、該当ピアのデフォルトルートの送信設定を削除してください。

設定はBGPアドレスファミリモードで行います。コマンドは以下のとおりです。

  • BGPアドレスファミリモード

    項目

    説明

    originate-default

    デフォルトルートの広告設定(全ピア)

    neighbor send-default

    デフォルトルートの送信設定

    リスト 2.15.32 設定例1:デフォルトルートがある場合にデフォルトルートを広告
    10.1.1.2へ対してデフォルトルートを広告しない
    
    router bgp 100
      neighbor 10.1.1.2 remote-as 200
      neighbor 10.2.1.2 remote-as 300
      address-family ipv4
        originate-default
        no neighbor 10.1.1.2 send-default
        redistribute connected
        redistribute static
    
    リスト 2.15.33 設定例2:常にデフォルトルートを広告
    router bgp 100
      neighbor 10.1.1.2 remote-as 200
      neighbor 10.2.1.2 remote-as 300
      address-family ipv4
        originate-default always
        redistribute connected
        redistribute static
    

2.15.6.3.2. 経路再配信

スタティックルート等のBGP以外のルーティング情報を再配信することができます。

経路再配信オプションに、ルートマップオプションを利用することにより、再配信経路をさらに詳細に制御することが可能となります。BGPの経路再配信で利用可能なルートマップのマッチ条件とセット条件には以下があります。ルートマップの詳細はルートマップの項を参照してください。

  • BGPアドレスファミリモード

    項目

    説明

    redistribute

    経路再配信の設定

  • グローバルコンフィグモード

    項目

    説明

    route-map

    ルートマップ設定

  • ルートマップコンフィグモード

    項目

    説明

    match ip address prefix-list

    IPv4宛先アドレスを条件とします。

    match interface

    インタフェースを条件とします。

    match ip next-hop prefix-list

    ネクストホップを条件とします。

    match metric

    メトリック値(MED)を条件とします。

    match tag

    タグを条件とします。

    match community

    コミュニティ属性を条件とします。

    set ip next-hop

    IPv4ネクストホップを設定します。

    set metric

    メトリック値(MED)を設定します。

    set as-path prepend

    ASパスにAS番号をプリペンドします。

    set local-preference

    ローカルプリファレンスの値を設定します。

    set origin

    オリジン属性を設定します。

    set community

    コミュニティ属性を設定します。

    リスト 2.15.34 設定例:経路の再配信
    OSPF、スタティックの経路を再配信します。
    スタティックルートの192.168.0.0/24の経路に対しては、ルートマップを用いてメトリックを6に設定
    その他の経路に対しては、メトリックは5を設定
    
    ip prefix-list prf-list1 10 permit 192.168.0.0/24
    ip prefix-list prf-list2 10 permit any
    !
    route-map stat-redist permit 10
      match ip address prefix-list prf-list1
      set metric 6
    !
    route-map stat-redist permit 20
      match ip address prefix-list prf-list2
    !
    router bgp 100
      default-metric 5
      neighbor 10.1.1.2 remote-as 200
      address-family ipv4
        redistribute ospf 1
        redistribute static route-map stat-redist
    

redistributeはルートマップ設定、プレフィックスリストの設定等の後に行ってください。redistribute設定後に経路制御の設定の変更を行った場合、ピアのリセット(clear ip bgp)が必要です。

2.15.6.3.3. 経路広告

ネットワーク単位で広告する経路を設定することができます。設定した経路は、ルーティングテーブルに存在する場合のみに広告されます。

設定コマンドは以下のとおりです。

  • BGPアドレスファミリモード

    項目

    説明

    network

    広告するネットワークの設定

    リスト 2.15.35 設定例:10.10.0.0/24を広告
    router bgp 100
      neighbor 10.1.1.2 remote-as 200
      address-family ipv4
        network 10.10.0.0/24
    

2.15.6.3.4. 経路の集約

経路の集約には以下の種類があります。

  • 指定したアドレスへの集約

aggregate-addressコマンドをsummary-onlyオプションなしで設定した場合は、指定した集約アドレスと、個々のルートの両方が広告されます。summary-onlyオプションをつけて設定した場合は、指定した集約アドレスのみが広告されます。

as-pathオプションをつけた場合は集約前の経路のAS番号も経路情報の属性に付与されます。

設定コマンドは以下のとおりです。

  • BGPアドレスファミリモード

    項目

    説明

    aggregate-address

    指定アドレスへの集約

../_images/15_routing4.svg

図 2.15.9 経路集約の制御

リスト 2.15.36 設定例:経路集約の設定
router bgp 100
  neighbor 10.1.1.2 remote-as 200
  address-family ipv4
    aggregate-address 10.1.0.0/16
    aggregate-address 192.168.0.0/16 summary-only
    aggregate-address 20.1.0.0/16 summary-only as-set

    redistribute connected

2.15.6.3.5. 経路フィルタ(プレフィックスリスト)

経路フィルタを使用することにより、受信する経路、送信する経路を制御することが可能です。フィルタはピア毎に、受信(in)方向、送信(out)方向それぞれ別に設定が可能です。

../_images/15_routing5.svg

図 2.15.10 プレフィックスリストによる経路フィルタの制御

設定は以下のとおりです。

設定を有効にするには、ピアのリセットが必要です。

  • BGPコンフィグモード

    項目

    説明

    neighbor distribute-list

    経路フィルタの設定

../_images/15_routing6.svg

図 2.15.11 プレフィックスリストによる経路フィルタの構成

リスト 2.15.37 設定例:経路フィルタの設定
10.1.1.2から、10.3.100.0/24の経路は受信しない
10.1.1.2に対し、10.1.10.0/24の経路のみ送信する

ip prefix-list pref-in 10 deny 10.3.100.0/24
ip prefix-list pref-in 20 permit any
ip prefix-list pref-out 10 permit 10.1.10.0/24
!
router bgp 100
  neighbor 10.1.1.2 remote-as 200
  address-family ipv4
    neighbor 10.1.1.2 distribute-list pref-in in
    neighbor 10.1.1.2 distribute-list pref-out out
    redistribute static

2.15.6.3.6. 経路フィルタ(ルートマップ)

ルートマップを使用することにより、受信する経路(in)、または送信する経路(out)に対して、パス属性の変更等をさらに詳細に制御することが可能となります。BGPで利用可能なルートマップのマッチ条件とセット条件には以下があります。ルートマップの詳細はルートマップの項を参照してください。

../_images/15_routing7.svg

図 2.15.12 ルートマップによる経路フィルタの構成

  • BGPアドレスファミリモード

    項目

    説明

    neighbor route-map

    経路フィルタの設定

  • グローバルコンフィグモード

    項目

    説明

    route-map

    ルートマップ設定

  • ルートマップコンフィグモード

    項目

    説明

    match ip address prefix-list

    IPv4宛先アドレスを条件とします。

    match ip next-hop prefix-list

    ネクストホップを条件とします。

    match metric

    メトリック値(MED)を条件とします。

    match community

    コミュニティ属性を条件とします。

    set ip next-hop

    IPv4ネクストホップを設定します。

    set metric

    メトリック値(MED)を設定します。

    set metric-type internal

    メトリックタイプを設定します。

    set as-path prepend

    指定したASパスを付加します。

    set local-preference

    ローカルプリファレンスの値を設定します。

    set origin

    オリジン属性を設定します。

    set community

    コミュニティ属性を設定します。

    リスト 2.15.38 設定例:ルートマップ
    10.1.1.2 に対し、192.168.0.0/24-192.168.255.0/24の経路広告時にMEDを+10、
    他の経路はMEDデフォルト値を広告
    
    ip prefix-list prefix1 10 permit 192.168.0.0/16 max 24
    ip prefix-list any-addr 10 permit any
    !
    route-map bgp1 permit 10
      match ip address prefix-list prefix1
      set metric +10
    !
    route-map bgp1 permit 20
      match ip address prefix-list any-addr
    !
    router bgp 100
      neighbor 10.1.1.2 remote-as 200
      address-family ipv4 unicast
        neighbor 10.1.1.2 route-map bgp1 out
        redistribute connected
    

2.15.6.4. パス属性

パス属性は、経路の特性を表すパラメータの集合です。BGPにおける最適経路の選択には、これらの属性を使用します。パス属性は、UPDATEメッセージの到達可能情報とともにピアに伝播されます。パス属性をうまく使うことにより、経路制御においてそのASのポリシーを反映させるなど、他のASに自分の持つポリシーを伝えることができます。

BGP4では以下の属性があります。

タイプ

属性

サポート

1

ORIGIN

2

AS_PATH

3

NEXT_HOP

4

MED(MULTI-EXIT-DISC)

5

LOCAL_PREFERENCE

6

ATOMIC_AGGREGATE

7

AGGREGATOR

9

ORIGINATOR

10

CLUSTER_LIST

14

MP_REACH_NLRI

×

15

MP_UNREACH_NLRI

×

16

EXT_COMMUNITY

×

ルートマップでサポートしているパス属性については任意の値が設定可能です。

サポート対象外の属性は経路情報受信時に無視され、経路情報広告時に含まれません。

以下に主なパス属性についての動作について説明します。

2.15.6.4.1. オリジン属性

経路情報の出所を表します。次の3つが定義されています。

  • IGP(タイプ0)

    • IGPを通して学習した経路

  • EGP(タイプ1)

    • EGPを通して学習した経路

  • INCOMPLETE(タイプ2)

    • 上記以外の別の手段で学習した経路

経路選択の際は、タイプの番号が低い方が優先されます。

ルートマップを使用することによりEGPを除く任意の値を設定できます。

2.15.6.4.2. ASパス属性

経路情報が通過したパスを表すASを格納します。各ASは経路情報をAS外部へ送信する際に自分のAS番号をリストの先頭へ付け加えます。したがって、ASパス属性には、経路が通過してきたAS番号がすべて含まれています。経路受信時にAS番号を確認することで、ループを防ぐことができます。また、ASパス属性は、最適経路の決定にも使用されます。2つのルートを比較する際にはASパスが短いルートが長いルートより優先されます。

ルートマップを使用することによって任意の値を設定(ASパスプリペンド)できます。

../_images/15_routing8.svg

図 2.15.13 ASパス属性

2.15.6.4.3. ネクストホップ属性

BGPのネクストホップは次のいずれかになります。

  • eBGPでは、経路を広告したピアルータのIPアドレスがネクストホップとなります。

  • iBGPでは、AS内で配信された経路については、経路を広告したピアルータのアドレスがネクストホップとなります。eBGPを通してASに注入された経路については、eBGPから学習したネクストホップがそのままiBGPへ広告されます。

  • 経路再配信でルートマップにネクストホップを設定

  • route-mapコマンドでルートマップにネクストホップを設定

BGPのネクストホップは、IGPのネクストホップとは多少異なり、ネクストホップは複数のネットワークをまたがった先にある場合があります。その場合は、IGPなどの経路情報によってネクストホップへ到達できる必要があります。

iBGPへ経路を広告する場合、iBGPへ広告を行うルータ自身をネクストホップとして設定することが可能です。設定コマンドは以下のとおりです。

  • BGPコンフィグモード

    項目

    説明

    neighbor next-hop-self

    ネクストホップ属性の自アドレス指定

    リスト 2.15.39 設定例:ネクストホップ属性
    iBGPへの経路広告時、ネクストホップに自アドレスを設定
    
    router bgp 100
      neighbor 10.0.0.2 remote-as 100
      address-family ipv4
        neighbor 10.0.0.2 next-hop-self
    

2.15.6.4.4. ローカルプリファレンス属性

ローカルプリファレンスは、AS内での経路の優先度を決定するために使用します。AS内では、ローカルプリファレンスの値が大きい経路が小さい経路より優先されます。ローカルプリファレンスは、eBGPから学習した経路に対して設定を行い、iBGPに広告します。AS内では、同一の評価を行う必要があるので、AS内のすべてBGPルータに対して交換されます。AS内でのみ有効な属性ですので、AS外には送信されません。

ローカルプリファレンスを設定することにより、自AS内のトラフィックを制御することができます。

../_images/15_routing9.svg

図 2.15.14 ローカルプリファレンス属性

route-mapを使用することにより任意の値を設定することができます。

eBGPから受信した経路の場合、経路受信時にデフォルトのローカルプリファレンス値が設定されます。

設定コマンドは以下のとおりです。

設定を有効にするには、ピアのリセットが必要です。

  • BGPコンフィグモード

    項目

    説明

    default-local-preference

    デフォルトローカルプリファレンス設定

  • 表示コマンド

    項目

    説明

    show ip bgp neighbor

    ピアの状態確認

    リスト 2.15.40 設定例:ローカルプリファレンス属性
    デフォルトローカルプリファレンスを50に設定
    
    router bgp 100
      neighbor 10.0.0.2 remote-as 200
      default-local-preference 50
    

2.15.6.4.5. MED属性

MEDは同じASに対して複数のピアが存在する場合に、経路の優先度を決定するために使用します。同じASの別なピアから、優先度が同じ経路を受信した場合、MEDの値が低い経路が高い経路より優先されます。ASが異なるピアから受信した経路に対しては、MEDの比較は行いません。MEDはAS間で交換されますが、受け取ったMEDは別のASには送信しません。別なASに経路を送信する際は、MEDはゼロにクリアされます。iBGPへ送信する場合は、MEDはそのままの値で送信します。

MEDを設定することにより、相手ASから自ASへのトラフィックを制御することができます。

../_images/15_routing10.svg

図 2.15.15 MED属性

MEDは、次の方法によって設定が可能です。

  • 経路再配信のMED指定

  • 経路再配信でルートマップにMEDを設定

  • route-mapコマンドを使用

経路再配信時にMED未設定の場合、またはnetwork設定時はdefault-metricにて設定した値をMEDとして設定します。default-metricが未設定の場合は、注入元の経路のコスト(IGPのコスト)を設定します。また、route-mapコマンド設定時にMED未設定の場合は、0を設定します。

設定を有効にするには、ピアのリセットが必要です。

  • BGPコンフィグモード

    項目

    説明

    default-metric

    デフォルトメトリック設定

    リスト 2.15.41 設定例:MED属性
    OSPF, スタティックの経路の再配信
    スタティックルートに対してはredistributeコマンドのmetricオプションを用いてメトリックを6に設定
    その他の経路に対してはメトリックを5に設定
    
    router bgp 100
      default-metric 5
      neighbor 10.1.1.2 remote-as 200
      address-family ipv4
        redistribute ospf 1
        redistribute static metric 6
    

2.15.6.4.6. コミュニティ属性

コミュニティ属性を使用することができます。ルートマップを使用することにより、該当するコミュニティ属性を持つ経路情報の条件指定や、経路情報へコミュニティ属性を設定することができます。

コミュニティ属性は次の方法によって指定可能です。

  • 経路再配信(ルートマップ指定)

  • 経路フィルタ(ルートマップ指定)

コミュニティ属性の条件指定は、以下の指定が可能です。

  • 指定したコミュニティ属性を含む経路情報

  • 指定したコミュニティ属性と完全に一致する経路

    リスト 2.15.42 設定例:コミュニティ属性の条件指定
    コミュニティ属性に0:10と0:20が含まれる場合にMED 5を設定
    コミュニティ属性が0:30と0:40の場合にMED 5を設定
    
    route-map bgp-map permit 10
      match community 0:10 0:20
      set metric 5
    !
    route-map bgp-map permit 10
      match community 0:30 0:40 exact-match
      set metric 5
    

コミュニティ属性の設定は、以下の指定が可能です。

  • コミュニティ属性の上書き

  • コミュニティ属性の追加・削除

    リスト 2.15.43 設定例:コミュニティ属性の設定
    コミュニティ属性に0:10と0:20を上書き
    コミュニティ属性に0:30と0:40を追加、0:20を削除
    
    route-map bgp-map permit 10
      set community 0:10 0:20
    !
    route-map bgp-map permit 10
      set community 0:30 0:40 additive delete 0:20
    

コミュニティ属性は、重複した値がある場合はひとつにまとめます。受信したコミュニティ属性、設定したコミュニティ属性どちらの場合も重複している場合は、ひとつの値として扱います。

Well-knownコミュニティは、次の値に対応しています。

コマンド指定

動作

0xFFFFFF01

no-export

eBGPに広告しない

0xFFFFFF02

no-advertise

いずれのピアにも広告しない

0xFFFFFF03

no-export-subconfed

eBGPに広告しない

2.15.6.5. 最適経路(ベストパス)の決定

BGPでは、同じ宛先の経路情報が複数存在する場合には、パス属性を用いて最適経路の決定を行います。以下の手順で最適経路を決定します。

  1. ネクストホップへ到達できない場合はその経路は使用しない。

  2. ローカルプリファレンスが最も高い経路が優先される。

  3. 自ルータが生成した経路が優先される。

  4. ASパスが最も短い経路が優先される。

  5. オリジン属性のタイプ番号が最も低い経路が優先される。

  6. 隣接する外部ASへの経路が複数存在する場合、MEDの低い経路が優先される。

  7. iBGPの経路よりeBGPの経路が優先される。

  8. 隣接したネクストホップの経路が優先される。

  9. ネクストホップへ最も近い(IGPのコストが低い)経路が優先される。

  10. ルータIDが最も小さいBGPルータからの経路が優先される。

  11. アドレスが最も小さいBGPルータからの経路が優先される(同一装置間で複数BGPセッションを設定した場合)。

最適経路として選択された経路がUPDATEメッセージによって他のピアへ広告されます。

2.15.6.6. イコールコストマルチパスの設定

BGPでは、同じ宛先の経路情報が複数存在する場合に、それらをイコールコストマルチパスとすることができます。

イコールコストマルチパスとすることで、パケット転送によるネットワークへの負荷を複数経路に分散することができます。イコールコストマルチパスのパケット転送動作についての詳細は、イコールコストマルチパスの項を参照してください。

Ver.1.2以降イコールコストマルチパスに対応しています。

BGPのイコールコストマルチパス数と有効設定は以下のコマンドを使用します。

項目

説明

multipath MULTIPATH-COUNT [ ignore-igp-cost ]

BGPイコールコストマルチパス数設定(アドレスファミリモード)

最適経路と同じ宛先の複数の経路が以下の条件を満たす場合に、イコールコストマルチパスとなります。ただし、他装置に広告する経路はイコールコストマルチパス未設定時と同様に最適経路(ベストパス)のみとなります。

  1. ネクストホップへの経路が存在しそのメトリック(IGPコスト)が最適経路と同じ

  2. ローカルプリファレンス属性値が最適経路と同じ

  3. ASパス属性値が最適経路と同じ

  4. オリジン属性値が最適経路と同じ

  5. MED(同一の隣接AS経路の場合)が最適経路と同じ

注釈

  • 上記IGPのコストの条件は、プロトコル種別とそのメトリックの両方が同じであることが条件となります。

  • マルチパス数設定コマンドのオプションにignore-igp-costを指定した場合、IGPのコストの条件は無視されます。

  • マルチパス数設定コマンドした数以上の経路が条件を満たす場合、経路学習元ピアのアドレスが大きい経路を優先してマルチパスとします。

2.15.6.7. NOTIFICATION

ピアが異常を検出した場合は、NOTIFICATIONメッセージを送信し、接続を切断します。NOTIFICATIONメッセージを確認することによって、異常の種類を知ることができます。

  • エラーコード1:メッセージヘッダエラー

    エラーサブコード

    内容

    1

    接続が同期になっていない

    2

    メッセージ長が正しくない

    3

    メッセージタイプが正しくない

  • エラーコード2:OPENメッセージエラー

    エラーサブコード

    内容

    備考

    1

    バージョン番号がサポートされていない

    2

    ピアAS番号が正しくない

    3

    BGP識別子が正しくない

    4

    オプションがサポートされていない

    5

    認証に失敗した

    IX-R/IX-V シリーズでは検出しません

    6

    ホールドタイマーが受け入れられない

    7

    ケイパビリティがサポートされていない

    IX-R/IX-V シリーズでは検出しません

    0

    上記以外のエラー

    不正なオプションサイズ、不正なケーパビリティサイズ

  • エラーコード3:UPDATEメッセージエラー

    エラーサブコード

    内容

    備考

    1

    属性リストが不正

    2

    周知属性が識別できない

    3

    周知属性がない

    IX-R/IX-V シリーズでは検出しません

    4

    属性フラグエラー

    5

    属性長エラー

    6

    オリジン属性が無効

    7

    ASルーティングループ

    IX-R/IX-V シリーズでは検出しません

    8

    ネクストホップ属性が無効

    IX-R/IX-V シリーズでは検出しません

    9

    オプション属性エラー

    IX-R/IX-V シリーズでは検出しません

    10

    ネットワークフィールドが無効

    11

    ASパスが不正

  • エラーコード4:ホールドタイマーの時間切れ

  • エラーコード5:状態遷移の異常

    エラーサブコード

    内容

    1

    OPENSENT状態からの状態遷移が異常

    2

    OPENCONFIRM状態からの状態遷移が異常

    3

    ESTABLISHED状態からの状態遷移が異常

  • エラーコード6:コマンドによる切断要求、上記以外のエラー

主なエラーの対処方法について説明します。

  • エラーコード4

    • 原因:ホールドタイマーの間、ピアが自装置のUPDATEまたはKEEPALIVEのいずれも受信していない場合に発生します。ピアのNOTIFICATIONは受信しているので、自装置からの送信または、ピアのルータでの受信処理または、自装置からピア方向の通信路に異常があると考えられます。

    • 対処方法:ルータ、通信路の確認を行ってください。

2.15.7. ポリシールーティング

注意

UNIVERGE IX-V シリーズをクラウドで利用する場合は、IPv6でのポリシールーティングは利用できません。

UNIVERGE IX-R/IX-V シリーズでは、送信先に基づいた経路選択(スタティックルーティングおよびダイナミックルーティング等)のみではなく、ポリシーに基づくポリシールーティングによる経路選択をサポートしています。ポリシールーティングを使用することにより、ルーティングテーブルによる経路制御に加えて、より細かな経路制御が可能となります。

ポリシールーティングは、ルートマップやアクセスリストとの組み合わせにより、高度な経路制御を行うことができますが、ここでは最も代表的な構成例として、送信元によってトラフィックのルートを決定するソースルーティングを以下に説明します。

ポリシールーティングは、以下の2つの設定から構成されます。

  • ルートマップによるトラフィックのポリシー設定

  • ポリシールーティングを実施するトラフィックへのルートマップの適用

2.15.7.1. ルートマップによるトラフィックのポリシー設定

ルートマップでトラフィックのポリシーを設定することにより、通常のルーティング処理ではできない、高度なルーティング処理をおこなうための条件設定や制御設定をおこなうことができます。

経路制御のポリシーの設定には、route-mapコマンドを使用します。ルートマップの設定は、以下の3つのステップにより構成します。

  • ルートマップの作成

  • トラフィックのマッチ条件設定

  • マッチしたトラフィックの動作設定

ルートマップの設定および確認には次のコマンドを使用します。

  • グローバルコンフィグモード

    項目

    説明

    route-map

    ルートマップ追加/ルートマップコンフィグモード

  • 表示コマンド

    項目

    説明

    show route-map

    ルートマップの状態表示

ポリシールーティングを行うためには、ルートマップを作成しておく必要があります。

リスト 2.15.44 設定例
route-map route1 permit 10

同一ルートマップ名で、シーケンス番号の違う複数のルートマップを作成した場合は、シーケンス番号の小さいルートマップから順次評価され、一番先にマッチしたルートマップが適用されます。

リスト 2.15.45 設定例
route-map route1 permit 10
  match ip address access-list rmap-acc1
!
route-map route1 permit 20
  match ip address access-list rmap-acc2

ポリシールーティングで制御するトラフィックをルートマップにマッチさせます。ポリシールーティングで利用可能であるルートマップのマッチ条件として以下の条件があります。

マッチ条件を設定しない場合は、すべてのパケットが対象となります。

  • ルートマップコンフィグモード

    項目

    説明

    match ip address access-list

    IPv4アクセスリストによるアドレス条件設定

    match ipv6 address access-list

    IPv6アクセスリストによるアドレス条件設定

    リスト 2.15.46 設定例
    ip access-list rmap-acc1 permit ip src 10.10.10.1/32 dest any
    ip access-list rmap-acc2 permit ip src 10.10.10.2/32 dest any
    !
    route-map route1 permit 10
      match ip address access-list rmap-acc1
    !
    route-map route1 permit 20
      match ip address access-list rmap-acc2
    

注釈

ポリシールーティングで用いるルートマップのマッチ条件には、アクセスリストを使用します。アクセスリストについての詳細は、アクセスリストの設定の節を参照ください。

ルートマップにマッチしたトラフィックに対する動作を設定します。ポリシールーティングで利用可能なルートマップの動作条件として以下の条件があります。

動作条件を指定しない場合は、ルーティング情報に従います。

  • ルートマップコンフィグモード

    項目

    説明

    set interface

    送信インタフェース指定

    set default interface

    デフォルト送信インタフェース指定

    set ip/ipv6 next-hop

    IPv4/IPv6 ネクストホップ指定

    set ip/ipv6 default next-hop

    IPv4/IPv6 デフォルトネクストホップ指定

    リスト 2.15.47 設定例
    ip access-list rmap-acc1 permit ip src 10.10.10.1/32 dest any
    ip access-list rmap-acc2 permit ip src 10.10.10.2/32 dest any
    !
    route-map route1 permit 10
      match ip address access-list rmap-acc1
      set ip next-hop 10.10.20.254
    !
    route-map route1 permit 20
      match ip address access-list rmap-acc2
      set ip next-hop 172.16.1.254
    

注釈

送信インタフェース指定/デフォルト送信インタフェース指定はTunnelなどのポイントツーポイントネットワークで用いられます。GigaEthernet等で設定を行った場合、ネクストホップアドレスが解決できないため、パケットのフォワーディングができなくなります。

2.15.7.2. ルートマップの適用

ルートマップを適用するトラフィックに割り当てることによって、ポリシールーティングを行います。適用できるトラフィックの種類には、以下の2つがあります。

  • 受信パケットに対するポリシールーティング

    受信パケットに対してポリシールーティングを行うには、受信インタフェースのインタフェースコンフィグモードにおいて、ルートマップを適用します。

    リスト 2.15.48 設定例
    interface GigaEthernet0.0
      ip policy route-map v4route1
    
  • ローカルパケットに対するポリシールーティング

    ping等ルータにて生成されたパケットに対してポリシールーティングを行うには、グローバルコンフィグモードにて、ルートマップを適用します。

    リスト 2.15.49 設定例
    ip local policy route-map localv4route1
    

注釈

ただし、IPsec等のトンネルでカプセル化後のパケットはルータにて生成されたパケットとして扱われますが、ローカルパケットに対するポリシールーティングの適用はできません。送信先をトンネルインタフェースとするために、IPsec等のカプセル化する前のパケットに対するポリシールーティングの適用は可能です。

2.15.7.3. ポリシールーティング設定時の経路選択の優先順位

ポリシールーティングと、通常のルーティング(スタティックルーティングおよびダイナミックルーティング等)を同時に設定した場合の経路選択優先順位を示します。

ルーティングの優先度

優先度

set interface(インタフェースがリンクアップしていれば適用)

↑高

set ip/ipv6 next-hop(ネクストホップへの経路が存在すれば適用)

通常のルーティング処理

set default interface(経路が存在しない場合に適用)

set ip/ipv6 default next-hop(経路が存在しない場合に適用)

↓低

2.15.7.4. ポリシールーティングの構成例

ポリシールーティングに使用するアクセスリストに、送信元アドレスを指定することにより、特定の送信元からのパケットを通常のルーティングに従わずルーティングさせることができます。

../_images/15_routing11.svg

図 2.15.16 ポリシールーティングの構成

リスト 2.15.50 設定例
10.10.10.1の端末からのパケットは10.10.20.254へ転送
10.10.10.2の端末からのパケットは172.16.1.254へ転送
その他は通常のルーティングに従う
(ルーティングの設定例は省略します)

ip access-list rmap-acc1 permit ip src 10.10.10.1/32 dest any
ip access-list rmap-acc2 permit ip src 10.10.10.2/32 dest any
!
route-map route1 permit 10
  match ip address access-list rmap-acc1
  set ip next-hop 10.10.20.254
!
route-map route1 permit 20
  match ip address access-list rmap-acc2
  set ip next-hop 172.16.1.254
!
interface GigaEthernet0.0
  ip address 10.10.10.254/24
  ip policy route-map route1
  no shutdown
!
interface GigaEthernet1.0
  ip address 10.10.20.1/24
  no shutdown
!
interface GigaEthernet2.0
  ip address 172.16.1.1/24
  no shutdown